看護師のIELTSは、5か国ともスピーキング7。アメリカでは、点数を求めるのはNCLEXではなくビザと州です
海外で看護師として働く準備を始めると、早い段階で「IELTS 7」「TOEFL 4.5」といった数字に出会います。けれど、どの国で、どの試験の、何点が、手続きのどの段階で要るのかは、国ごとにばらばらに書かれています。この記事では、アメリカ・オーストラリア・イギリス・カナダ・ニュージーランドの看護師の英語の基準を、各国の規制機関と試験機関の原文で確かめて並べます。読み終えるころには、自分が受けるべき試験と目標点、そして受ける時期がわかります。
1. 国ごとの最低点——IELTSで並べると、スピーキングはどこも7
5か国の基準を、いちばん多くの国が認めている IELTS Academic の点数で並べます。
- アメリカ(ビザの手前で取る VisaScreen)——総合6.5、スピーキング7
- オーストラリア(2026年4月23日以降に受けた試験)——総合7、リスニング・リーディング・スピーキング7、ライティング6.5
- イギリス——リスニング・リーディング・スピーキング7、ライティング6.5(総合点の指定はありません)
- ニュージーランド——リスニング・リーディング・スピーキング7、ライティング6.5
- カナダ・オンタリオ州——総合7、リスニング7・スピーキング7、リーディング・ライティング6.5
並べると形がはっきりします。スピーキングは5か国とも7で、ライティングは6.5で足りる国がほとんど。総合点はアメリカだけが6.5で、ほかは7前後です。看護師の英語の基準は、「話せること」に線が引かれていると言えます。
違いが大きいのは点数よりも、どの試験を認めるかと、手続きのどこで点数を見るかです。この2つを、アメリカから順に見ていきます。
2. アメリカ——英語の点数を見るのは、NCLEXではなくビザと州
まず押さえておきたいのは、NCLEXそのものは英語の試験の点数を求めないことです。NCLEXの受験者案内(2026年4月版)は、受験の条件を「各州の看護局の要件を満たすこと」としか書いておらず、英語の試験は出てきません。試験はアメリカでは英語だけで行われ(フランス語を選べるのはカナダだけ)、辞書は持ち込めません。
アメリカで看護師の英語の点数を求めるのは、次の2か所です。
ビザ——VisaScreenの英語の要件
外国で教育を受けた看護師がアメリカで働くビザを取るには、TruMeritが出す VisaScreen(外国で資格を取った医療職の審査)の証明書が要ります(ビザの手前の関門の全体はアメリカで看護師になるにはの記事)。その審査の1つが英語の試験です。点数を決めるのはアメリカ保健福祉省で、連邦規則は「英語の要件の基準を定める権限は保健福祉長官だけが持つ」と書いています(8 CFR 212.15(g)(1))。
保健福祉省のHRSAが出している、2026年5月12日からの看護師(RN)の基準はこうです。
- IELTS:総合6.5・スピーキング7(TruMeritが認めるのはAcademicだけ)
- TOEFL iBT:総合4.5・スピーキング4.5・リーディング/リスニング/ライティング3.5
- OET:スピーキング360・リーディング340・ライティング350・リスニング320
- PTE Academic:総合55・スピーキング76・リーディング/ライティング/リスニング62
- Cambridge(B2 First・C1 Advanced・C2):総合169・スピーキング194
- MET(ミシガン英語テスト):総合58・スピーキング59
このときの改定で、TOEICと紙のTOEFLは一覧から外れました。TruMeritは、5月12日より前に受けた試験は旧基準で、5月12日以降に受けた試験は新基準で判定すると書いています。
手続きの上で気をつける点が3つあります。
- 自宅受験は認められません。TruMeritは「英語の試験の自宅受験版は受け付けない」と書いています
- 成績は試験機関から直接送ってもらいます。自分で成績表を送るのではなく、試験機関からTruMeritへ電子的に送る決まりです(TOEFLの送付先コードは9988)
- VisaScreenには、NCLEX-RNの合格も要ります。RNの場合、TruMeritの看護師資格試験(NQE)かNCLEX-RNのどちらかに合格していることが条件です
HRSAは点数表の下に、この基準を満たした証明書があってもアメリカに入国できることや看護師として働けることの証明にはならない、とも書いています。英語の点数は、ビザに向かう書類の1枚です。
州の免許——求める州と、求めない州がある
もう1か所は、州の看護局の免許です。こちらは州によって違います。
- ニューヨーク州——外国で教育を受けた人の免許の要件に、英語の試験は入っていません。ただしFAQは、英語以外で教える学校を出た人は、NCLEXの前に働くための仮免許(limited permit)を出す前に英語の試験を求められることがある、と書いています
- カリフォルニア州——看護局のFAQは、最初の看護教育が英語で行われなかった人にはTOEFLを求めると書き、最低点をリーディング22・リスニング22・スピーキング26・ライティング22(旧0〜30点の区分)と示しています。FAQにIELTSの点数は出てきません
- テキサス州——英語の試験を求め、点数はHRSAの2026年の表と同じです(Cambridgeは認めていません)。2026年8月1日に更新されたページで、9月1日からは紙と旧コンピューター版のTOEFLを受け付けないとしています
NCSBNが2024年にまとめた各州の看護局の調査では、回答した看護局のうちTOEFLを認めるのが51(98%)、IELTSを認めるのは41(79%)でした。IELTSを認めていない看護局もあるということです。同じ調査でカリフォルニア州はIELTSも認めると答えていて、FAQの書き方とは食い違います。働く州が決まったら、その州の看護局に、試験の種類と点数を直接確かめてください。
3. どの試験を受けるか——使える国が違います
4つの試験を、使える国で分けるとこうなります。
- IELTS Academic——5か国すべてとアメリカのVisaScreenで使えます。General Training(一般の版)を看護師の登録に使えるのは、今回見た中ではオンタリオ州だけでした
- OET(Occupational English Test)——5か国すべてとアメリカのVisaScreenで使えます。医療職のための試験で、ライティングとスピーキングは看護師用の問題です
- TOEFL iBT——アメリカとオーストラリアでは使えますが、イギリスとニュージーランドは認めていません。カナダのオンタリオ州とBC州の一覧にもありません。オーストラリアで使うなら、TOEFLの申し込み画面で「Taking TOEFL for Australia」を選んでおかなければなりません
- PTE Academic——アメリカ・オーストラリア・カナダでは使えますが、イギリスとニュージーランドは認めていません
イギリスのNMCは、認める試験をIELTS AcademicとOETの2つに絞っている理由を「スピーキングを、コンピューターではなく人が試験するから」と書いています。TOEFLはヘッドセットに向かって答えを吹き込み、PTEは主にAIが採点します。IELTSは試験官と1対1の面接、OETは相手役との看護の場面のロールプレイ(約20分)です。
ここから言えることは単純です。行き先の国がまだ1つに決まっていないなら、IELTS AcademicかOET。アメリカだけと決めているならTOEFLも選べます。カリフォルニア州で免許を取るつもりなら、FAQが点数を示しているTOEFLが確実です。
4. TOEFLの点数は、2026年1月から1〜6点になりました
TOEFL iBTの成績は、2026年1月21日から0〜120点ではなく1〜6点(0.5刻み)で出るようになりました。総合点は4技能の平均です。HRSAの新しい基準「総合4.5」は、この新しい点数です。
ETSの対照表では、新しい総合4.5は旧スケールの86点以上、5.0は95点以上にあたります。技能別では、スピーキング4.5が旧23〜24点です。HRSAの旧基準は「81点・スピーキング24点」だったので、総合点の線は旧スケールで言えば上のほうに引き直された形です。
ややこしいのは、まだ旧スケールで書いている規制機関があることです。オーストラリアは2026年4月23日以降の試験にも「総合91・スピーキング24」と0〜120点で書いていて、カリフォルニア州も旧0〜30点の区分点のままです。ETSは移行期間の2年間、新しい成績表に0〜120点の目安の総合点も載せるとしています。自分の成績を、どちらのスケールで読むのかを確かめてください。
5. 有効期間は2年。受け直しのルールは国ごとに違います
成績の有効期間は、どの試験もおおむね2年です。ETSはTOEFLの成績を「試験日から2年有効」とし、2年を過ぎた成績は送らないと書いています。IELTSの日本の実施団体も、成績証明書の有効期間を試験日から2年としています。規制機関の側も、オーストラリア・イギリス・オンタリオ州は2年以内の成績を求めています(ニュージーランドは全部の受験が申請前3年以内)。
アメリカを目指す場合は、この2年と順番の関係に気をつけてください。VisaScreenはNCLEX-RNの合格が条件で、成績は試験機関からの直接送付です。NCLEXより何年も前に受けた成績は、使う前に送れなくなるおそれがあります。
受け直しと自宅受験のルールは、国で違います。
- 2回分の成績を合わせる——オーストラリアは12か月以内の2回まで(同じ試験・各回に下限あり。IELTSならどの回も総合7)。イギリスも12か月以内の2回まで。ニュージーランドも最初の受験から12か月以内なら合わせられます
- IELTSの1技能だけの受け直し(One Skill Retake)——オーストラリアとオンタリオ州は認め、イギリスは認めていません
- 自宅受験・オンライン版——オーストラリア・ニュージーランド・アメリカのTruMeritは認めていません。イギリスはIELTS Onlineを認めない一方、OETの自宅受験(OET@Home)は認めています
TruMeritとHRSAのページには、成績の合わせ方や1技能の受け直しについての記述は見つかりませんでした。
6. 日本で受けるには——料金と会場
2026年9月27日時点の、日本で受ける場合の料金と会場です。
- TOEFL iBT——US$195(約3万700円)。2025年4月1日に$245から下がりました。会場は全国28都道府県の53か所。成績はETSのアカウントに試験の3日後に出ます
- IELTS——29,700円(日本英語検定協会・2026年9月1日以降の申し込み)。日本スタディ・アブロード・ファンデーション(JSAF)は10月31日まで27,500円です。紙の試験は2026年8月で終わり、いまはコンピューター版だけ(スピーキングは試験官との対面)。1技能の受け直しは19,250円です。会場は東京・大阪・横浜・福岡・広島・名古屋・京都など。成績は1〜5日後
- OET——AU$587(約6万4,900円)。日本の会場は東京と大阪で、コンピューター受験です
- PTE Academic——US$235(約3万7,000円)。会場は東京と大阪。成績はふつう2日ほどで出ます
いちばん安いのはTOEFL、いちばん高いのはOETで、その差は2倍を超えます。ただし、TOEFLはイギリスとニュージーランドで使えず、OETはどの国でも使えます。行き先の数で割って考えてください。
7. 点数では測られない英語——NCLEXの1問
最後に、英語の試験とNCLEXの英語は別物だという話をします。IELTSで7を取っても、NCLEXの英語に慣れたことにはなりません。NCLEXの問題文は、アメリカの病棟とアメリカの暮らしの英語で書かれているからです。バンクの1問で見てみます。
A nurse is reinforcing dietary teaching for a client with heart failure who has had repeated admissions for fluid overload. Which statement by the client requires follow-up?
体液過剰で入退院を繰り返している心不全の患者に、看護師が食事の指導を補強している。追加の対応(follow-up)が必要な患者の発言はどれか。
- "I'll weigh myself at the same time each morning after urinating."「毎朝、同じ時間に、排尿したあとで体重を測ります」
- "I'll ask my provider whether I need to adjust potassium-rich foods while taking furosemide."「フロセミドを飲んでいるあいだ、カリウムの多い食品を調整する必要があるか主治医に聞きます」
- "I'll replace my restaurant takeout with deli sandwiches from the market."「レストランのテイクアウトをやめて、スーパーのデリのサンドイッチにします」
- "I'll add short daily walks as my energy allows."「体力に合わせて、毎日少し散歩をします」
正解:3
requires follow-up(追加の対応が必要)は、NCLEXでは「この発言は間違っている」という意味です。正しい指導を選ぶ問題ではなく、誤った理解を見つける問題として読みます。
答えを分けるのは deli sandwiches の一語です。deli のサンドイッチに挟むハムやターキーは加工・塩蔵した肉で、ナトリウムが多い。外食のテイクアウトを減らしたつもりでも、塩分の制限にはなっていません。
1の排尿後の体重測定は体液貯留を見つける正しい自己管理、2はフロセミドとカリウムの関係を理解した上で医師に確かめる適切な発言、4は耐えられる範囲の運動で、どれも問題ありません。
ここがポイント:英語の試験は、deli がアメリカの食卓で何を指すかまでは問いません。NCLEXは、それを知っている看護師かどうかを問います。
出典:NCLEX BANK / 成人看護 🫀 Cardiovascular #3 Q1
NCLEX BANKの解説は、この問題のように、医療用語とアメリカの生活の言葉を英語のまま残し、日本語で「なぜそうなるか」を書いています。心不全の問題の考え方はNCLEXの心不全の記事で詳しく扱っています。
まとめ
- 看護師の英語の基準は、IELTSで並べるとスピーキングが5か国とも7。ライティングは6.5で足りる国がほとんど
- アメリカでは、NCLEXは英語の点数を求めない。求めるのはビザ(VisaScreen)と、州によっては免許
- VisaScreenの基準(2026年5月12日から)は、IELTS 6.5・スピーキング7、TOEFL 4.5・スピーキング4.5、OET スピーキング360など。TOEICは使えなくなった
- ニューヨーク州は免許の要件に英語の試験がない。カリフォルニア州の看護局はFAQでTOEFLの点数(スピーキング26など)を示している
- TOEFLはイギリスとニュージーランドで使えない。行き先が決まっていないならIELTS AcademicかOET
- TOEFLは2026年1月から1〜6点。4.5は旧スケールの86点以上にあたる
- 成績の有効期間はおおむね2年。アメリカのVisaScreenはNCLEX合格が条件なので、早く受けすぎない
- 日本での受験料は、TOEFL $195、IELTS 29,700円、PTE $235、OET AU$587
よくある質問
アメリカで看護師として働くには、英語の試験で何点が必要ですか?
ビザの手前で取るVisaScreenでは、2026年5月12日以降に受けた試験なら、IELTS(Academic)で総合6.5・スピーキング7、TOEFL iBTで総合4.5・スピーキング4.5・ほかの3技能3.5、OETでスピーキング360・リーディング340・ライティング350・リスニング320が基準です。点数を決めているのはアメリカ保健福祉省のHRSAです。これとは別に、州によっては看護師の免許にも英語の試験を求め、カリフォルニア州の看護局はFAQでTOEFLの点数を示しています。NCLEXそのものは英語の試験の点数を求めません。
看護師はIELTSとTOEFLのどちらを受けるべきですか?
行き先の国がまだ1つに決まっていないなら、IELTS Academicが無難です。アメリカ・オーストラリア・イギリス・カナダ・ニュージーランドのすべてで使え、イギリスとニュージーランドはTOEFLを認めていないからです。医療職向けのOETも5か国すべてで使えます。アメリカだけを目指すならTOEFLも使え、日本での受験料はTOEFLが$195、IELTSが29,700円です。カリフォルニア州の看護局はFAQでTOEFLの点数を示しているので、働く州が決まっているなら、その州の看護局の要件も確かめてください。
NCLEXを受けるのに英語の試験は必要ですか?
NCLEXの受験者案内(2026年4月版)には、英語の試験の要件はありません。受験の条件は各州の看護局が決め、たとえばニューヨーク州の免許の要件にも英語の試験は入っていません。ただし、ビザのためのVisaScreenでは英語の試験の合格点が要り、カリフォルニア州など州によっては免許にもTOEFLなどを求めます。NCLEXはアメリカでは英語だけで行われ、辞書は持ち込めません。
5月12日の前後で旧基準/新基準・TOEICの除外:TruMerit Updated English Language Proficiency (ELP) Exams and Score Requirements by HRSA(2026年5月26日)
認める試験(IELTSはAcademic)・自宅受験版は不可・RNはNQEかNCLEX-RNの合格:TruMerit VisaScreen のページ
成績は試験機関から電子的に直接送付・TOEFLのコード9988:TruMerit FAQ: How to submit documents
英語の基準を定める権限は保健福祉長官:8 CFR 212.15(g)(1)
NCLEXの受験条件は各州の看護局・言語の変更はカナダのみ・辞書の持ち込み不可:NCLEX Examination Candidate Bulletin(2026年4月版)
ニューヨーク州の免許の要件・仮免許の前の英語の試験:NYSED Registered Professional Nursing — License Requirements、Frequently Asked Questions
カリフォルニア州のTOEFLと区分点:California Board of Registered Nursing Licensing FAQs(16 CCR 1413)
テキサス州の試験と点数:Texas Board of Nursing Approved English Proficiency Exams(2026年8月1日更新・22 TAC 217.4)
TOEFLを認める看護局51・IELTSは41・カリフォルニア州の回答:NCSBN Member Board Profile(2024年・テキサス州看護局2025年4月の理事会資料7.3に収録)
オーストラリアの点数(2026年4月23日以降・以前)・2回の合算・自宅受験不可・「Taking TOEFL for Australia」:Ahpra Accepted English language tests、NMBA English language skills registration standard
イギリスの点数・認める試験は2つ・スピーキングを人が試験・合算・IELTS OnlineとOne Skill Retake不可・OET@Home可:NMC English language requirements(IELTS・OETのページ)
ニュージーランドの点数・PTE不可・合算・オンライン不可:Nursing Council of New Zealand English language requirements、English Language Competence Policy
オンタリオ州の点数とIELTS General Training・One Skill Retake:College of Nurses of Ontario Proficiency in English or French
シンガポール:Singapore Nursing Board Foreign-trained nurses のページ(2026年6月9日更新)/ドバイ:Unified Healthcare Professional Qualification Requirements(2025年4月版)
TOEFLの1〜6点・対照表・2年有効で2年後は送らない・料金$195:ETS Understanding Your Scores、ETS Japan(TOEFL iBTの特徴・料金)
IELTSの料金・紙の試験の終了・有効期間2年・One Skill Retake:日本英語検定協会(IELTS受験案内)、JSAF(受験料改定のお知らせ)、IELTS One Skill Retake
OETの料金・日本の会場・看護師用の問題:OET Test fees、Find a test、Results and scoring
PTEの料金・日本の会場・AI採点:Pearson PTE Academic test centers and fees、Scoring
為替 1ドル=157.5円・1豪ドル=110.6円:2026年9月27日 00:02 UTC 時点のレート(exchangerate-api)
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