手続き ・ アメリカで看護師になる

アメリカで看護師になるまでの関門は6つ。NCLEXはその3番目で、いちばん長い段ではありません

アメリカで看護師として働くまでに通る関門は、6つあります。NCLEXはそのうちの3番目で、いちばん有名ですが、いちばん時間がかかる段ではありません。しかもこの6つは、それぞれ決めている組織が違います。州の看護局、NCSBN、Pearson VUE、TruMerit、USCIS——全体を見ている窓口はどこにもなく、順番と締切を管理するのは受験者本人です。この記事では、日本の看護師がアメリカのRN(Registered Nurse)になるまでの6段を、それぞれ誰が決めるのか・いくらかかるのか・どれだけ待つのかで並べます。

この記事の読み方 料金と手順は2026年9月20日に、NCSBNの受験案内(2026年4月版)とnclex.com、ニューヨーク州教育局(NYSED)、TruMerit(旧CGFNS)、米国市民権・移民局(USCIS)、米国保健資源事業局(HRSA)、連邦規則 8 CFR 212.15 の各公式ページで確認しました。免許の決まりは州ごとに違います。この記事はニューヨーク州を例に書いていますが、ほかの州を選ぶなら、同じ項目をその州の看護局が出している公式ページで確かめ直してください。円は同じ日の1ドル157.1円で換算しています。ビザの区分の選び方はこの記事では扱いません——移民手続きの助言にあたるためです。出典は記事の最後にまとめています。

1. 全体は6段あります

順に並べると、こうなります。かっこの中は、その段を決めている組織です。

  1. 州を選ぶ(その州の看護局)
    免許は州が出します。どの州を選ぶかで、この先の条件が全部変わります
  2. 学歴審査を受ける(TruMerit・州が求める場合だけ)
    日本の看護教育がアメリカの同等の教育と釣り合うかを見ます
  3. NCLEXに合格する(試験はNCSBN、会場と予約はPearson VUE、受験資格を出すのは州)
  4. 州の免許を受け取る(その州の看護局)
    働けるのは、免許番号が出た日からです
  5. VisaScreenを取る(TruMeritなど4団体・USCISが承認)
    学歴・免許・英語・NCLEX合格をもう一度まとめて証明します
  6. ビザを取る(雇用主とUSCIS・国務省)

この6つは、別々の組織が別々の基準で動かしています。ある段が終わったことを次の段に自動で伝えてくれる仕組みはありません。書類を送るのも、期限を数えるのも、本人の仕事です。

NCLEXは全米共通、免許は州ごと NCLEXは全米で同じ試験です。州ごとに違う試験があるわけではありません。ところが免許を出すのは州で、必要な書類も料金も州ごとに違います。「NCLEXに受かればアメリカの看護師免許が手に入る」という言い方は、この2つを一緒にしています。合格は免許の条件のひとつです。

2. 最初に決めるのは、試験ではなく州です

勉強を始める前に決めることが1つあります。どの州に免許を申請するかです。ここが決まらないと、そもそもNCLEXに登録できません。受験資格を認めて Pearson VUE に伝えるのは、州の看護局だからです。

州によって違うのは、たとえばこういう点です。

韓国の看護師の書類はどちらの窓口を通ってもニューヨーク州教育局に届くので、韓国ではニューヨーク州が実質の標準になっています。日本からはその縛りがないぶん、自分で調べて選ぶ必要があります。州の選び方と必要書類は受験手続きの記事に、免許が出たあとの決まりは合格後の免許の記事にまとめています。

3. 学歴審査——いちばん長く待つのは、ここです

州が求める場合、日本の看護教育がアメリカの看護教育と釣り合うかを第三者に審査してもらいます。よく使われるのが TruMerit(2024年に CGFNS から改称)の CES Professional Report で、料金は $485(約76,000円)です。

ここで知っておきたいのは料金より時間のほうです。TruMerit は自分の処理について、こう書いています。

審査は速く、待ち時間はほぼ全部「書類が動く時間」です。しかも原本は本人ではなく学校から直接送ってもらう必要があります。自分の手元にある卒業証明書を送っても受け付けられません。卒業した学校に連絡を取り、担当者を見つけ、手順を説明するところから始まります——この記事の中で、いちばん早く着手できて、いちばん放置されやすいのがここです。

4. NCLEX——$200 と、日本で受けるための $150

受験資格が認められたら、Pearson VUE に受験登録をします。かかるお金は2つです。

日本国内の会場は大阪(梅田)と新宿の2か所です。国際会場を置いている国は21か国あり、そのなかに韓国は入っていません。どの州に申請していても、会場のほうは自由に選べます。州と会場は結びついていないので、日本の2か所で受けられます。

登録が済むと、州の看護局が Authorization to Test(ATT) を出します。ATTの有効期間は平均90日で、この窓の中で受験しなければなりません。延長はできません。試験は年間を通じて行われていて、決まった試験日はありません。

試験そのものは85〜150問・最長5時間です。問題数と合否は関係がありません。中身と採点のしくみはNCLEXとはに、日程と予約は試験日の記事に、当日の持ち物は試験当日の記事にあります。

5. 免許——働けるのは、免許番号が出た日から

公式の結果は、受験から6週間以内に州の看護局から届きます。ただし合格しただけでは働けません。学歴審査や申請書類などほかの条件がすべてそろったときに、看護局が免許番号を出します。働きはじめられるのは、その免許の効力が発生する日からです。

試験から何日で免許が出るかは、公表されていません。ほかの条件がどこまで進んでいるかで人によって変わるからです。

ニューヨーク州の場合、免許そのものは一生有効で、3年ごとに $73(約11,000円)を払って更新するのは、免許ではなく「登録」のほうです。ニューヨーク州で働いていないあいだは、この登録をお金をかけずに止めておけます。つまり合格してから渡米までに何年か空いても、免許を取り直す必要はありません

6. VisaScreen——ビザの前に、もう一度まとめて証明します

免許を持っていても、それだけではビザは下りません。看護師を含む7つの医療職は、ビザの段階で「医療職従事者証明書」を出すよう連邦法(8 CFR 212.15)で定められています。その代表が TruMerit の VisaScreen です。

審査されるのは4つです。学歴・これまでに持った全ての免許・英語・そして NCLEX-RN の合格。3段目と4段目でやったことを、もう一度まとめて1枚の証明書にする段だと考えると分かりやすくなります。

日本の読者にとって大事なのは、英語試験が免除されないことです。免除されるのはカナダ(ケベックを除く)・オーストラリア・アイルランド・ニュージーランド・イギリス・アメリカの学校を出た人だけで、日本の看護学校はこの一覧に入っていません

2026年5月12日にTOEICが外れました 認められる英語試験と基準点は HRSA が決めていて、2026年5月12日に目録が入れ替わりました。この日からTOEICは使えません(紙のTOEFLも外れました)。残っているのは TOEFL iBT・IELTS・ケンブリッジ・MET・OET・PTE の6つです。適用は受験した日で切れ、5月12日より前に受けた成績は旧基準で審査されます。
⚠️ 連邦規則 8 CFR 212.15 の条文にはいまも「TOEIC 725」が残っていますが、同じ条文が「点数の基準を決める権限は保健福祉省にある」と定めているため、実際に使われるのは HRSA の目録のほうです。条文を引用した記事を見てTOEICを準備しないでください。
看護師の基準点は IELTS 6.5(スピーキング7)/TOEFL iBT 総合4.5(スピーキング4.5・他3技能3.5)/PTE 総合55(スピーキング76)などです。なお TOEFL は2026年1月21日に0〜120点から1〜6点に変わっており、ETSの対照表では4.5は旧スケールの86点以上にあたります。

料金は $740(約116,000円)、証明書の有効期間は5年です。ここでいう5年は「発行日から5年以内に、入国・在留資格の変更・延長・永住権申請のいずれかに使わなければならない」という意味で、使わないまま5年が過ぎたら取り直しになります。更新は満了の6か月前から満了後6か月までのあいだに $475(約75,000円)です。

英語の成績は2年、VisaScreenは5年 IELTS も TOEFL も、成績の有効期間は2年です。一方 VisaScreen の証明書は5年。この差があるので、英語試験を早く取りすぎると、VisaScreenを出すときには切れているということが起こります。英語をいつ受けるかは、VisaScreenを出す時期から逆算して決めるほうが安全です。

7. ビザ——ここから先は、雇用主と移民手続きの話です

6段目は、これまでの5段と性質が違います。本人だけでは進められません。雇用主が必要で、手続きの主体は本人ではなく雇用主と移民当局になります。

この記事ではビザの区分の選び方は扱いません。どの区分が適切かは個別の事情で変わり、それを判断するのは移民弁護士の仕事だからです。ここで押さえておきたいのは、1〜5段目は自分のペースで進められて、6段目だけは相手が要るということです。だからこそ、相手が現れたときに5段目まで終わっていることに意味があります。

8. お金を足すと

ニューヨーク州を例に、日本から受ける場合の公的な費用を並べます。

合計 $1,718(約27万円)です。ここに含まれていないものがあります——英語試験の受験料、書類の郵送費、会場までの交通費と宿泊費、教材費、そしてビザの手続き費用。試験の登録料は全体の12%しかありません。「NCLEXにいくらかかるか」で見積もると、実際の金額とは一桁近くずれます。

9. 長いのは審査ではなく、書類が動く時間です

公表されている待ち時間を並べると、性格の違いがはっきりします。

審査そのものは、どれも数日で終わります。長いのは、学校・看護協会・看護局のあいだを紙が動く時間です。ここは勉強量ではどうにもならないかわりに、早く始めれば早く終わります。逆に、NCLEXの勉強を始めてから学校に連絡しようとすると、その14週はまるごと後ろに足されます。

勉強のほうの組み立ては勉強法と学習計画に、合格率の実データは合格率と難易度に、渡米後の給料は給料・年収の記事にあります。

まとめ

  1. アメリカで看護師になるには6段あり、NCLEXは3番目。全体を見ている窓口はどこにもない
  2. 最初に決めるのは試験ではなく。州が受験資格を出さないとNCLEXに登録できない
  3. いちばん長いのは学歴審査で、原本が届くまで平均14週。しかも学校から直接送ってもらう
  4. NCLEXは $200 + 国際会場の $150。日本は大阪と新宿の2か所、韓国には会場がない
  5. 働けるのは合格日ではなく免許番号が出た日から。何日かかるかは公表されていない
  6. ビザの前に VisaScreen が要る。$740・有効5年、日本の看護学校は英語免除の対象外
  7. 2026年5月12日からTOEICは使えない。条文にはまだ残っているが、効いているのはHRSAの目録
  8. 公的な費用の合計はおよそ $1,718(約27万円)。NCLEXの登録料はそのうち12%

よくある質問

NCLEXに合格すれば、アメリカで看護師として働けますか?

働けません。NCLEXは全米共通の試験ですが、免許を出すのは州の看護局で、合格は免許の条件のひとつです。働けるようになるのは、学歴審査や申請書類などほかの条件がすべてそろって、看護局が免許番号を出した日からです。さらにアメリカで就労するにはビザが必要で、その前段として VisaScreen(医療職従事者証明書)を取る必要があります。試験から免許までに何日かかるかは、ニューヨーク州は公表していません。

日本の看護師がアメリカで看護師になるには、全部でいくらかかりますか?

ニューヨーク州を例にすると、公的な費用は学歴審査 $485、NCLEX登録料 $200、国際受験の追加料 $150、免許申請と初回登録 $143、VisaScreen $740 で、合計およそ $1,718(約27万円・2026年9月20日のレート)です。これに英語試験の受験料、書類の郵送費、会場までの交通費、教材費、ビザの手続き費用は含まれていません。なおNCLEXの受験登録料は2027年2月1日から $350に上がります。

アメリカで看護師になるのに英語の試験は必要ですか?

必要です。NCLEX自体に英語試験の要件はありませんが、ビザの前に取る VisaScreen で英語力の証明が求められます。免除されるのはカナダ(ケベックを除く)・オーストラリア・アイルランド・ニュージーランド・イギリス・アメリカの学校を出た人で、日本の看護学校はこの一覧に入っていません。使える試験は2026年5月12日に入れ替わり、TOEICは使えなくなりました。残っているのは TOEFL iBT・IELTS・ケンブリッジ・MET・OET・PTE の6つで、看護師の基準点は IELTS なら総合6.5・スピーキング7です。IELTSとTOEFLの成績は2年で切れるので、受ける時期は VisaScreen を出す時期から逆算してください。

出典(2026年9月20日確認) 受験登録料 $200・2027年2月1日に $350 へ上がること・国際受験の追加料 $150 と現地の消費税・国際会場の範囲:NCSBN NCLEX — Fees & Payment(nclex.com/fees-payment.page)、同 Testing Locations
ATTの平均90日と延長不可・結果は受験から6週間以内・85〜150問と最長5時間:NCSBN NCLEX Examination Candidate Bulletin(2026年4月版)
日本の会場(大阪・新宿)と国際会場のある21か国:International Pearson Professional Center Sites and Addresses(2026年4月版)
CES Professional Report $485・VisaScreen $740・更新 $475・処理は書類到着後3.5営業日で90%(半分は当日)・原本の到着まで平均14週:TruMerit(trumerit.org)の Fee ScheduleVisaScreenApplication Processing Times
医療職従事者証明書が要る7職種・証明書を出せる団体・「発行から5年以内に使う」こと・永住権取得後は不要:USCIS Health Care Worker Certification(uscis.gov)
英語要件と免除される国・条文に残るTOEIC 725・点数を決める権限が保健福祉省にあること:8 CFR 212.15(g)(ecfr.gov)
2026年5月12日からの試験と基準点・TOEICと紙のTOEFLが外れたこと・受験日で新旧が切れること:HRSA Updated list of Tests and Scores for Foreign Health Care Workers (as of May 12, 2026)(hrsa.gov)、TruMeritの同件の告知
TOEFLの1〜6スケール(2026年1月21日開始)と旧スケールとの対照:ETS TOEFL iBT Score Scale Update(ets.org)
IELTSとTOEFLの成績の有効期間が2年であること:各試験機関の公式案内
ニューヨーク州の申請料 $70・初回登録 $73・免許は一生有効・登録は3年ごと $73・無料の休止:NYSED Office of the Professions(op.nysed.gov)
為替 1ドル=157.1円:2026年9月20日 00:02 UTC 時点のレート(exchangerate-api)

6つの関門の3番目がどんな試験か、10問だけ無料で

NCLEX BANKは、2,700問超のNCLEX形式問題に日英混合の解説をつけた問題バンクです。問題文と選択肢は本番と同じ英語のまま、解説は医療用語を英語で残して日本語で書いています。誤答の3つにもそれぞれ「なぜ違うのか」が付いています。月額 $99、いつでも解約できます。

無料10問を試す