領域別 ・ 循環器

NCLEXの心不全は「左か右か」で解ける

心不全は、日本の病棟で毎日見ている疾患だと思います。だからこそもったいないのが、「知っているのに英語で落とす」という失点です。NCLEXの心不全問題が本当に聞いているのは、難しい病態生理ではありません。「その所見は、左心不全か右心不全か」——ほぼこれ一つです。この記事では、その仕分けの線を1本引いてから、実際にNCLEX BANKに収録している問題を3問解きます。英語の用語にはすべて日本語をつけます。

この記事の使い方 英語の長文が読めなくても構いません。所見の単語だけ拾って左右に振り分ける——それで正解できる問題が、心不全では大半を占めます。

1. 覚えるのは、たった1本の線

心不全の所見を1つずつ暗記しようとすると、20個以上あって心が折れます。でも、こう考えると一気に減ります。

この記事の結論 血液は、弱ったポンプの「手前」で渋滞する。
左心(左心室)が弱れば、その手前にあるで渋滞する。= 肺の所見
右心(右心室)が弱れば、その手前にある全身の静脈で渋滞する。= 全身の所見

これだけです。あとは所見を「肺のことを言っているか、それ以外か」で振り分けるだけになります。

左心不全=肺で渋滞右心不全=全身で渋滞
英語の所見 crackles(捻髪音)
orthopnea(起座呼吸)
paroxysmal nocturnal dyspnea(発作性夜間呼吸困難・PND)
dyspnea(呼吸困難)
jugular venous distension(頸静脈怒張・JVD)
peripheral edema(末梢性浮腫)
hepatomegaly(肝腫大)
ascites(腹水)
ひとことで 息が苦しい むくむ・張る
ただし現実は 実際の患者では左右が併存します。慢性心不全が進行すれば両方の所見が出ます。この表は「典型像」として使ってください。問題文が片方だけを指定しているときに効く道具です——次の例題がまさにそれです。

2. 例題① 右心不全と言われたら、肺の話は消す

例題 1 ・ SATA(すべて選べ)
問題文

A client is admitted with right-sided heart failure caused by pulmonary hypertension. Which clinical manifestations are most likely to be found on assessment? Select all that apply.

肺高血圧症による右心不全で入院した患者。アセスメントで最も認められやすい臨床所見はどれか。あてはまるものをすべて選べ。

選択肢
  1. Jugular venous distension頸静脈怒張
  2. Dependent peripheral edema下垂部の末梢性浮腫(下肢・仙骨部)
  3. Hepatomegaly with right upper quadrant tenderness肝腫大と右上腹部の圧痛
  4. Paroxysmal nocturnal dyspnea発作性夜間呼吸困難(PND)
  5. Bibasilar crackles両側肺底部の捻髪音

正解:1・2・3
問題文が right-sided(右心不全)言い切っています。だから「全身で渋滞」の所見だけを選びます。1は頸静脈、2は下肢、3は肝臓——全部、肺より下流の全身です。

逆に4のPNDと5のcracklesは、どちらも pulmonary congestion(肺うっ血)左心不全の所見。「肺」と読めた瞬間に消せます。

ここがポイント:この問題、病態生理を1ミリも考えなくても解けます。選択肢を「肺の話か、それ以外か」で二分して、問題文が指定した側だけ残す。それだけです。

出典:NCLEX BANK / 成人看護 🫀 Cardiovascular #7 Q16

3. 例題② 「悪化」と書かれたら、両方が出る

さっきの表は片側を指定された時の道具でした。では指定がないときは?ここで「左右は併存する」が効いてきます。

例題 2 ・ SATA(すべて選べ)
問題文

A nurse is admitting a client with worsening chronic heart failure. Which clinical manifestations would the nurse expect to find? Select all that apply.

悪化した慢性心不全の患者を受け入れている看護師。予測される臨床所見はどれか。あてはまるものをすべて選べ。

選択肢
  1. Crackles heard on auscultation聴診で聴かれる捻髪音
  2. Poor skin turgor with tenting皮膚ツルゴールの低下・テンティング
  3. Jugular venous distention頸静脈怒張
  4. Dry oral mucous membranes口腔粘膜の乾燥
  5. 3+ pitting edema of the ankles足首の3+ 圧痕性浮腫
  6. Rhonchi that clear with coughing咳で消失する類鼾音

正解:1・3・5
今度は左右の指定がありません。「悪化した慢性心不全」なので両方出ます。1は肺(左)、3と5は全身(右)——3つとも「渋滞=うっ血」の所見です。

この問題の罠は2と4です。皮膚のテンティングと口腔粘膜の乾燥は、volume depletion(体液量減少=脱水)のサイン。心不全は「水が多すぎる」病気なのに、「水が足りない」所見を混ぜてあるわけです。日本語で考えれば絶対に選ばない選択肢ですが、英語だと目が滑ります。

6の rhonchi(類鼾音)は太い気道の分泌物の音で、咳をすると消えます。肺胞に水が溜まる心不全の音ではありません。

覚え方:心不全=水が余っている。乾いている所見が出てきたら、それは違う病態の話。

出典:NCLEX BANK / 成人看護 🫀 Cardiovascular #3 Q19

4. 例題③ 所見がわかっても、順番を間違えると落ちる

最後は毛色が違います。所見の知識ではなく優先順位を問う問題です。

例題 3 ・ 四択
問題文

A client with chronic heart failure telephones the clinic to report a weight gain of 4 lb (1.8 kg) over the past 3 days. Which question is most important for the nurse to ask first?

慢性心不全の患者が、この3日間で1.8 kg(4ポンド)体重が増えたとクリニックに電話してきた。看護師が最初に聞くべき、最も重要な質問はどれか。

選択肢
  1. "How much fluid have you been drinking each day?"「毎日どのくらい水分を摂っていますか?」
  2. "Have you been short of breath or noticed swelling in your legs?"「息切れはありますか?脚のむくみに気づきましたか?」
  3. "What have you eaten over the past few days?"「この数日、何を食べましたか?」
  4. "Have you missed any doses of your water pill?"「利尿薬を飲み忘れませんでしたか?」

正解:2
3日で1.8 kgの急増は、fluid overload(体液過剰)による増悪のサインです。ここまでは全員わかります。問題は、4つとも聞くべきことだという点です。

戦略ワードは first「全部正しいが、順番を問う」——攻略ガイド第3回で扱った形そのものです。

1・3・4は「なぜ増えたか」=原因の質問。2だけが「今どれだけ危ないか」=症状の質問です。NCLEXは常に原因究明より患者の安全を先に置きます。息切れがあるなら今すぐ受診、なければ食事や服薬を聞いていく——2を聞かないと、その分岐が作れません。

これが看護過程です。アセスメント(症状の確認)が先、原因の分析はその後。第4回の3段階の型がそのまま効きます。

出典:NCLEX BANK / 成人看護 🫀 Cardiovascular #3 Q4

まとめ

心不全でやることは、3つだけです。

  1. 所見を左右に振り分ける — 肺の話なら左、それ以外なら右
  2. 「乾いている」所見を除く — 心不全は水が余る病気。脱水の所見は罠
  3. first と書かれたら症状を先に聞く — 原因究明はその後

英語力ではなく、この3つの型を持っているかどうかで正答率が変わります。所見の英単語は20語ほどで、しかも同じ語が何度も出てきます。長文を読む練習ではなく、単語と所見の対応表を作る作業だと思ってください。

よくある質問

NCLEXの心不全問題で、左心不全と右心不全はどう見分けますか?

所見が「肺」に出ていれば左心不全、「肺以外の全身」に出ていれば右心不全です。左心不全は肺うっ血なのでcrackles(捻髪音)、orthopnea(起座呼吸)、PND(発作性夜間呼吸困難)。右心不全は体静脈うっ血なのでJVD(頸静脈怒張)、末梢性浮腫、肝腫大、腹水が出ます。所見を一つずつ暗記するのではなく、どちらの循環がうっ滞しているかで仕分けてください。

心不全の患者に体重増加があったら、まず何を確認しますか?

息切れや浮腫といった生理的症状の有無を最初に確認します。食事内容・水分摂取量・利尿薬の飲み忘れも重要ですが、それらは症状を確認したあとです。NCLEXは原因の追究より、患者が今どれだけ危険かの判断を先に置きます。慢性心不全では数日で1〜2kgの急な体重増加が体液過剰による増悪のサインです。

英語が苦手でもNCLEXの心不全問題は解けますか?

解けます。心不全の所見を表す英単語は20語ほどで、しかも繰り返し同じ語が出ます。crackles、jugular venous distension、pitting edema、orthopnea などを日本語の所見と結びつけて覚えれば、問題文全体が読めなくても選択肢の仕分けはできます。長文読解ではなく単語の対応表を作る作業です。

この3問は、実際に収録している問題です

NCLEX BANKには心不全だけで33問、循環器全体で293問、全体で2,700問超を収録しています。この記事の解説は、実際の問題についている日本語解説をそのまま短くしたものです。英語の医療用語には、すべて日本語訳がついています。月額 $99、いつでも解約できます。

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