NCLEXの優先順位の決め方|ABCs・マズロー・看護過程で解く臨床判断
第3回で、問題文の読み方と選択肢の消し方を扱いました。最終回のテーマは「残った選択肢から、どうやって1つを選ぶか」です。NCLEXで最も多い「すべて正しく見えるが、優先順位を問う」タイプの問題を、3つの型で機械的に処理する方法をまとめます。オリジナル例題10問つきです。
1. 優先順位を決める3段階の型
先に全体像を示します。優先順位を問われたら、この順番で当てはめるだけです。
- 看護過程のどのステップを問われているかを判断する
→ アセスメントか実施かがわかれば、選択肢が半分になることも多い - 残った選択肢を ABCs(気道・呼吸・循環) で比べる
→ より生命に直結するほうを選ぶ - ABCsで決まらなければ マズロー を使う
→ 生理的ニーズが心理社会的ニーズより優先
この3段階が、以降のセクションの骨格です。ひとつずつ見ていきます。
2. 看護過程の5ステップで解く
NCLEXの問題の多くは、看護過程のどのステップを問うているかを見抜くことで正解にたどり着けます。看護過程は看護の基本中の基本ですが、NCLEXではこれが「解答の枠組み」として機能します。
| ステップ | 英語 | NCJMM認知スキル | 内容 |
|---|---|---|---|
| ① アセスメント | Assessment | Recognize Cues | 情報収集。観察・測定・確認 |
| ② 分析 | Analysis | Analyze Cues / Prioritize Hypotheses | データの解釈、問題の優先順位づけ |
| ③ 計画 | Planning | Generate Solutions | 介入計画の立案 |
| ④ 実施 | Implementation | Take Action | 計画の実行 |
| ⑤ 評価 | Evaluation | Evaluate Outcomes | 結果と期待値の比較 |
first initial immediate が出たら、まずアセスメントを選ぶのが基本です。ただし生命に直結する緊急事態では行動(Take Action)が優先されます。問題文に緊急性を示す所見があるかで判断してください。
A client returns to the unit after an arteriogram performed through the right femoral artery. The client reports increasing pain in the right thigh.
右大腿動脈からの動脈造影を終えた患者が病棟に戻った。患者は右大腿部の痛みが増強していると訴えている。
Which action would the nurse take first?
看護師が最初にとるべき行動はどれか?
- Apply additional pressure to the insertion site.
- Administer the prescribed analgesic.
- Inspect the groin site and assess the right pedal pulses.
- Document the client's report of pain.
正解:3
穿刺部より末梢の疼痛増強は、後出血や血腫による神経血管障害を示唆します。ただしまだ確定していません。選択肢1・2・4はいずれも実施(Implementation)のステップです。看護過程の第一歩はアセスメント。穿刺部の視診と足背動脈の触知でデータを追加するのが最初の行動になります。
The nurse reviews the arterial blood gas results of a client and notes: pH 7.49, Pco₂ 30 mm Hg, HCO₃ 23 mEq/L.
看護師は患者の動脈血ガス分析の結果を確認し、pH 7.49、Pco₂ 30 mm Hg、HCO₃ 23 mEq/L を認めた。
The nurse analyzes these results as indicating which condition?
看護師はこれらの結果をどの状態と分析するか?
- Respiratory alkalosis, uncompensated
- Respiratory acidosis, compensated
- Metabolic alkalosis, uncompensated
- Metabolic acidosis, compensated
正解:1
正常値は pH 7.35〜7.45/Pco₂ 35〜45 mm Hg/HCO₃ 22〜26 mEq/L。手順で解きます。
① pH 7.49 → 高い(アルカローシス側)
② Pco₂ 30 → 低い
③ pHとPco₂が逆方向に動いている → 呼吸性の問題
④ HCO₃ 23 → 正常範囲内 → 代償が起きていない=uncompensated
血ガスは「pHとPco₂が逆方向なら呼吸性、同方向なら代謝性」と覚えておけば、その場で組み立てられます。
A client with type 1 diabetes mellitus is found diaphoretic, shaky, and confused. The blood glucose is 52 mg/dL. The client is awake and able to swallow.
1型糖尿病の患者が発汗・振戦・意識混濁を呈している。血糖値は52 mg/dL。患者は覚醒しており嚥下は可能である。
Which action would the nurse take next?
看護師が次にとるべき行動はどれか?
- Administer intramuscular glucagon.
- Give 15 g of a fast-acting carbohydrate by mouth.
- Start an intravenous infusion of dextrose 50%.
- Recheck the blood glucose in 30 minutes.
正解:2
ここはアセスメントではなく行動が正解になる場面です。血糖値というデータがすでに提示され、低血糖と確定しているからです。
鍵は awake and able to swallow。意識があり嚥下可能なら経口の速効性炭水化物15gが第一選択で、グルカゴン筋注(選択肢1)や50%ブドウ糖静注(選択肢3)は意識障害や嚥下不能の場合に用います。選択肢4は治療せずに放置することになり不適切です。
The nurse is evaluating a client's response to fluid resuscitation for hypovolemia. Over the shift the blood pressure rose from 92/54 to 116/70 mm Hg, the heart rate fell from 118 to 84 beats per minute, and urine output increased from 15 mL/hour to 45 mL/hour.
看護師は循環血液量減少に対する輸液療法への反応を評価している。勤務帯を通じて血圧は92/54から116/70 mmHgに上昇し、心拍数は118から84回/分に低下、尿量は15 mL/時から45 mL/時に増加した。
Which interpretation would the nurse make?
看護師はどのように解釈するか?
- The client is responding well to fluid resuscitation.
- The client is developing fluid overload.
- The infusion rate should be increased.
- The client is showing early signs of acute kidney injury.
正解:1
3つの指標がすべて改善方向に動いています。血圧上昇・頻脈の改善・尿量増加は、循環血液量が回復したことを示す典型的な組み合わせです。
ここでも「書かれていないデータを読み込まない」原則が効きます。肺副雑音や浮腫(選択肢2)、クレアチニン上昇(選択肢4)を示す記載は問題文のどこにもありません。
3. ABCsで優先順位を決める
看護過程で「アセスメントか実施か」を判断できても、同じステップの中で複数の選択肢が残ることがあります。そのとき、どちらが優先かを決める基準がABCsです。
- A — Airway(気道) 最優先気道が塞がれば死に直結する
- B — Breathing(呼吸)酸素供給の確保
- C — Circulation(循環)心拍・出血・血圧
The nurse is caring for a client who received intravenous midazolam for a bedside procedure.
看護師は、ベッドサイド処置のためにミダゾラムを静脈内投与された患者をケアしている。
Which action would the nurse take as the priority?
看護師が優先してとるべき行動はどれか?
- Monitor the client's bowel sounds.
- Encourage oral fluids once the client is alert.
- Assess the respiratory rate and oxygen saturation continuously.
- Measure the client's urine output hourly.
正解:3
戦略ワードは priority。ミダゾラムはベンゾジアゼピン系で、最も危険な副作用は呼吸抑制です。呼吸数とSpO₂の継続的な観察は B(Breathing) に該当し、他の3つ(消化器・水分・腎)より上位に来ます。「この薬で死ぬとしたら何が原因か」と考えると、ABCsのどこに当てはまるかが見えます。
4. マズローで優先順位を決める
ABCsは気道・呼吸・循環という身体面に特化した基準です。しかしNCLEXには「身体的ケアと心理的ケアのどちらを優先するか」を問う問題も多くあります。そこで使うのがマズローの欲求段階説です。
ルールはシンプルで、下の階層が満たされていなければ上の階層には進めない——それだけです。
| 階層(下から) | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| ① 生理的ニーズ | 気道、呼吸、心拍、栄養、排泄 | 酸素投与、疼痛管理 |
| ② 安全・安心 | 怪我の防止、安全感の促進 | 転倒予防、感染対策 |
| ③ 愛と所属 | 支援体制、孤立からの保護 | 家族面会、グループ参加 |
| ④ 自尊心 | コントロール感、能力感 | 自己決定の支援 |
| ⑤ 自己実現 | 希望、霊的安寧、成長 | スピリチュアルケア |
The nurse is planning care for a client newly admitted to a long-term care facility who has moderate dementia.
看護師は、中等度の認知症があり長期療養施設に入所したばかりの患者のケアを計画している。
Which action would the nurse identify as the priority?
看護師はどの行動を優先すべきと判断するか?
- Introducing the client to other residents at mealtime
- Encouraging the client to display personal photographs in the room
- Ensuring that the client's nutritional intake and hydration are adequate
- Arranging for the client to attend the weekly music program
正解:3
4つとも認知症患者への適切なケアです。だからこそ階層で切ります。選択肢1と4は「愛と所属」、選択肢2は「自尊心」。栄養と水分は生理的ニーズ(第1階層)で、唯一の最下層です。
認知症で摂取が不十分になりやすい患者であることを踏まえても、まず生命維持の基盤を確保するのが先になります。
5. 異常値を見つける
問題文にデータ(検査値、バイタルサイン)が提示されたら、まず「正常か異常か」を判断することが第一歩です。異常値を見つけたら、次に「その異常値がこの患者の状況とどう関係するか」を考えます。この2ステップが解答の鍵になります。
The nurse is caring for a client who takes lithium carbonate and reports a coarse hand tremor and vomiting. The nurse reviews the most recent laboratory results.
看護師は炭酸リチウムを服用中の患者をケアしており、患者は粗大な手指振戦と嘔吐を訴えている。看護師は最新の検査結果を確認した。
Which laboratory value indicates a need for follow-up?
どの検査値についてフォローアップが必要か?
- Sodium 138 mEq/L
- Lithium level 2.1 mEq/L
- Creatinine 0.9 mg/dL
- White blood cell count 7,500/mm³
正解:2need for follow-up = 異常値を選ぶ問題です(第3回の要注意ワード)。
ナトリウム138(正常135〜145)、クレアチニン0.9(正常0.6〜1.2)、白血球7,500(正常5,000〜10,000)はすべて正常範囲。リチウムの治療域は0.6〜1.2 mEq/Lで、2.1は明らかな中毒域です。粗大振戦と嘔吐というEventの記述が、リチウム中毒の症状と一致します。
6. 治療的コミュニケーション
NCLEXでは「看護師としてどう患者に声をかけるか」を問う問題が繰り返し出題されます。このタイプは医学知識がなくても解けることが多いのが特徴です。「この応答を聞いた患者はどう感じるか」を想像すれば、正解が見えてきます。
| 治療的な応答 | 非治療的な応答 |
|---|---|
| 患者の感情に焦点を当てる | 偽りの安心("Don't worry, everything will be fine.") |
| 患者がさらに話せるよう促す(open-ended) | Why で始まる質問(患者を防御的にさせる) |
| 判断や評価を含まない | 話題を変える/患者の感情を無視する |
A client who has just been told that a breast biopsy showed cancer says to the nurse, "I don't know how I'm going to tell my children."
乳房生検でがんが判明したと告げられたばかりの患者が、看護師に「子どもたちにどう伝えたらいいかわからない」と言った。
Which response by the nurse is most appropriate?
看護師のどの応答が最も適切か?
- "Your children are adults. I'm sure they will understand."
- "Why do you think telling them will be so difficult?"
- "Telling your children feels overwhelming right now. Would you like to talk about it?"
- "Let's focus on your treatment plan first and worry about that later."
正解:3
選択肢1は偽りの安心(false reassurance)。選択肢2は Why で始まり、患者に理由の説明を強いて防御的にさせます。選択肢4は話題を変えて感情を脇に置く応答です。
選択肢3は患者の感情を言葉にして返し(reflection)、さらに話すことを促しています。迷ったら「この応答で患者は話し続けられるか?」と考えてください。
7. 委任(Delegation)のルール
「誰にどの業務を任せるか」を問う委任の問題は頻出です。日本の看護体制とは職種の区分が異なるため最初は戸惑いますが、核はシンプル——「この患者の状態」と「このスタッフの業務範囲」は合っているか?
| スタッフ | 英語 | できること |
|---|---|---|
| 看護助手 | AP (Assistive Personnel) | 非侵襲的ケア:清拭、歩行介助、ROM訓練、身だしなみ、衛生ケア |
| 准看護師 | LPN / LVN | APの業務 + フォーカスドアセスメント + 一部の侵襲的手技(吸引、導尿、ドレッシング交換)+ 経口・皮下・筋注の与薬 |
| 正看護師 | RN | LPN/LVNの業務 + 包括的アセスメント + 静脈内与薬 + 教育の開始 + ケアの監督 |
The charge nurse on a medical unit is making assignments for the shift.
内科病棟のチャージナースが勤務帯の業務割り当てを行っている。
Which task would the charge nurse assign to the licensed practical nurse (LPN/LVN)?
チャージナースは准看護師(LPN/LVN)にどの業務を割り当てるか?
- Administering a unit of packed red blood cells
- Developing the plan of care for a newly admitted client
- Reinserting an indwelling urinary catheter for a stable client
- Teaching a client to self-administer insulin for the first time
正解:3
導尿は侵襲的手技ですが、状態の安定した患者に対してであればLPN/LVNの業務範囲内です。
一方、輸血を含む静脈内投与(選択肢1)、看護計画の立案(選択肢2)、初回の患者教育(選択肢4)はいずれもRNの業務です。特に選択肢4は要注意で、教育の「開始」はRN、開始済み内容の「補強」はLPNという線引きになります。
8. 薬理問題の攻略法
薬理は出題数が多い分野ですが、何百もの薬を丸暗記する必要はありません。鍵は2つです。
① 薬の名前の語尾パターンを覚える
語尾を見れば薬のクラスがわかり、クラスがわかれば作用・副作用・注意点が推測できます。
| 語尾 | 分類 | 例 | 主な適応 |
|---|---|---|---|
-lol | β遮断薬 | atenolol, metoprolol | 高血圧、不整脈 |
-pril | ACE阻害薬 | lisinopril, enalapril | 高血圧、心不全 |
-sartan | ARB | losartan | 高血圧 |
-statin | 脂質低下薬 | atorvastatin | 高脂血症 |
-azepam | ベンゾジアゼピン系 | diazepam | 不安、痙攣 |
-prazole | PPI | omeprazole | 胃潰瘍、GERD |
② 薬理の鉄則を押さえる
- 制酸薬(antacid)は他の薬の吸収に影響するので、同時に服用しない
- 腸溶コーティング錠・徐放錠は砕かない
- 患者が自己判断で薬の量を調整・中止してはならない
- 看護師も自己判断で薬の量を変更・中止してはならない
- OTC薬やハーブサプリは、主治医の許可なく併用しない
- アルコール摂取を避ける
- 処方が読みにくい、または通常と異なる用量の場合は、投与前に確認する
Metoprolol is prescribed for a client with newly diagnosed hypertension.
高血圧と新たに診断された患者にメトプロロールが処方された。
Before administering the first dose, which assessment is the priority?
初回投与前に、優先すべきアセスメントはどれか?
- Apical heart rate and blood pressure
- Serum potassium level
- Daily weight
- Bowel sounds
正解:1
Metoprolol → 語尾が -lol → β遮断薬。心拍数と血圧を下げる薬なので、主なリスクは徐脈と低血圧です。投与前に心尖部心拍数と血圧を確認するのが標準的な看護行為になります。
薬名を知らなくても、語尾だけで正解にたどり着けた——これが語尾パターンの威力です。
まとめ — 全4回の総括
この連載でお伝えしたことを、1枚にまとめます。
| 回 | テーマ | 核心 |
|---|---|---|
| 第1回 | 試験の全体像 | NCLEXは「知っているか」ではなく「どう判断し、どう動くか」を問う |
| 第2回 | 勉強法と学習計画 | 知識量の勝負ではなく、半年続けられる仕組みの勝負 |
| 第3回 | 読み方と消去法 | 問題文には読み方の作法がある。知らないと知識があっても落とす |
| 第4回 | 優先順位と臨床判断 | 3つの型に当てはめれば、優先順位は機械的に決まる |
ここまでの4回で、NCLEXという試験の「型」はひと通り揃いました。あとは実際の問題で、この型を体に染み込ませていく段階です。
最後に一つだけ。第2回でお伝えしたとおり、型を知らずに問題数だけこなすのは、穴の開いたバケツに水を注ぐようなものです。逆に言えば、型さえ持っていれば、同じ100問から得られるものがまるで変わります。
あなたの名前の横に「RN」が並ぶ日まで、この4本が役に立つことを願っています。
よくある質問
NCLEXで優先順位を問われたとき、何から考えればいいですか?
3段階で考えます。まず看護過程のどのステップを問われているかを判断し、選択肢を絞ります。次に残った選択肢をABCs(気道・呼吸・循環)で比較します。ABCsで決まらない場合にマズローの欲求段階説を使い、生理的ニーズを心理社会的ニーズより優先します。この順番で当てはめると、優先順位問題の大半は解けます。
firstと聞かれたら必ずアセスメントを選べばいいですか?
基本はアセスメントですが、例外があります。生命に直結する緊急事態では、情報収集より行動が優先されます。たとえば輸血反応が疑われる場面では、まず輸血を止めるという行動が正解になります。問題文に緊急性を示す所見があるかどうかで判断してください。
NCLEXの委任(Delegation)問題はどう解きますか?
「この患者は安定しているか」「このケアは結果が予測できるか」の2点を確認します。安定していて予測可能なケアは看護助手(AP)に委任できます。准看護師(LPN/LVN)は吸引や導尿などの侵襲的手技と経口・皮下・筋注の与薬まで、正看護師(RN)は包括的アセスメント、静脈内与薬、患者教育の開始、ケアの監督を担当します。
薬の名前を全部覚える必要がありますか?
必要ありません。語尾のパターンを覚えれば薬のクラスが推測でき、クラスがわかれば作用と副作用も推測できます。-lolはβ遮断薬、-prilはACE阻害薬、-statinは脂質低下薬、-sartanはARB、-azepamはベンゾジアゼピン系、-prazoleはPPIです。初めて見る薬名でも語尾で判断できます。
型を、3,000問で体に入れる
NCLEX BANKは、3,000問超のNCLEX形式問題に日英バイリンガルの解説をつけた問題バンクです。この記事の例題と同じ形式で、すべての問題に「なぜその優先順位なのか」を日本語で解説しています。買い切り・無期限アクセス。
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