アメリカの看護師の種類は、免許で数えると3つです。NPも麻酔看護師も、土台はNCLEX-RNで取るRNの免許です
「アメリカの看護師」と一口に言っても、免許は1つではありません。アメリカの労働統計局(BLS)が2025年5月に行った調査では、登録看護師(RN)が約338万人、LPNと呼ばれる准看護師にあたる職種が約65万人、ナースプラクティショナー(NP)が約32万人。その横に、看護師の免許を持たない看護助手が約145万人います。この記事では、それぞれがどの試験を受け、どんな教育を経て、いくらもらっているのかを、BLSの統計、NCLEXを作るNCSBNの文書、州の条文で確かめ、日本の准看護師・専門看護師・診療看護師(NP)と並べます。読み終えるころには、日本の看護師がアメリカで最初に取るのはどの免許で、NCLEXがどこで効いてくるのかがわかります。
1. 免許で数えると3段。その下に、免許ではない仕事が1つ
アメリカの看護職を、どの試験を受けて、何の免許をもらうかで並べると、こうなります。
- LPN / LVN(Licensed Practical / Vocational Nurse・准看護師にあたる)
州が認める1年ほどの課程 → NCLEX-PN → 州の免許 - RN(Registered Nurse・登録看護師)
州が認める看護教育 → NCLEX-RN → 州の免許 - APRN(Advanced Practice Registered Nurse・上級実践看護師)——NP・麻酔看護師・助産看護師・専門看護師の4つ
RNの免許 → 大学院(修士以上) → 全国の認定試験 → 州のAPRNの免許 - 看護助手(Nursing Assistant・CNA)
州が認める訓練 → 州の認定。NCLEXは受けません
いちばん大事なのは、3段目が2段目の上に積まれていることです。BLSの職業ハンドブックは、APRNは修士以上の学位を持ち、その州のRNの免許を持ち、全国の認定試験に合格し、州のAPRNの免許を持たなければならない、と書いています。上級の役割の教育に進む前にRNの免許が要る、とも書いています。NCSBNが州に示しているモデル法も、APRNの定義に「RNとしての免許」を入れています。NPも麻酔看護師も、土台はNCLEX-RNで取るRNの免許です。
一方で、1段目と2段目は積み上げではありません。LPNの免許はRNになる条件ではなく、RNを目指す人はRNの課程を出て、最初からNCLEX-RNを受けます。
2. 人数と年収——BLSの2025年5月の調査
BLSが2026年5月15日に公表した、2025年5月時点の職業別の統計です。人数は雇用されている人の数、年収は中央値(税引き前)です。
- 登録看護師(RN):3,379,720人・年収中央値 $97,550(約1,537万円)
- LPN / LVN:648,410人・$64,400(約1,015万円)
- ナースプラクティショナー(NP):323,040人・$132,300(約2,084万円)
- 麻酔看護師(CRNA):51,840人・$236,590(約3,727万円)
- 助産看護師(CNM):7,920人・$134,040(約2,112万円)
- 看護助手:1,448,910人・$42,260(約666万円)
いくつか読み方があります。まず、APRNの4つ目、専門看護師(CNS)はこの一覧にありません。BLSの職業分類はRNの定義に「Clinical Nurse Specialists を含む」と書いていて、統計の上ではRNの中に数えられています。制度の上ではAPRNの1つです。
次に、BLSの公表資料が名前を挙げている2つの事実です。RNは、医療専門職・技術職のグループでいちばん人数の多い職業で、2番目がLPNです。そして麻酔看護師は、同じグループで医師・歯科医師を除くと平均年収がいちばん高い職業($248,320)です。
最後に、RNの年収は州で大きく違います。同じ資料で、RNの平均年収はアラバマ州とサウスダコタ州のおよそ$77,000からカリフォルニア州の$150,280まで開いています。税引き前の数字をどう読むかは、アメリカの看護師の給料の記事で詳しく扱っています。
3. RN——NCLEX-RNで取る、いちばん多い免許
BLSの職業分類は、RNの仕事を「患者の健康上の問題とニーズを評価し、看護計画を立てて実行し、記録を管理する」と定義し、免許または登録が必要と書いています。受けるのは NCLEX-RN で、2026年版のテストプランは、この試験を免許を取ったばかりの、入口のRNとして安全に働けるかを測るものだと説明しています。NCLEX BANKが扱っているのもこの試験です。
RNになるための教育は1本ではありません。たとえばニューヨーク州は、外国で看護教育を受けた人に2学年以上の一般看護教育課程を求めていて、学士号は入口の条件ではありません(詳しくはNCLEXの受験資格の記事)。日本の看護師が目指すのは、この段です。
移民の規則でも、名前が出てくるのはこの段です。永住権の手続きで労働証明を省ける Schedule A は、対象をprofessional nurse(専門職の看護師)とし、その仕事を「臨床判断」や「医師・歯科医師が処方した薬と治療の実施」を含むものと定義しています(20 CFR 656.5)。条件は、働く州の免許、TruMeritの証明書、NCLEX-RNの合格のどれか1つです。ここに NCLEX-PN は出てきません。流れはアメリカの看護師の永住権の記事にまとめています。
4. LPN / LVN——日本の准看護師に近いが、同じではありません
BLSの職業ハンドブックによると、LPN(州によっては LVN)は、州が認める教育課程(ふつう1年ほど)を修了し、試験に合格して免許を取ります。その試験が NCLEX-PN です。職業分類には「RNの監督のもとで働くことがある。免許が必要」とあります。
ニューヨーク州でLPNの免許をもらうには、年齢(17歳以上)と高校卒業に加えて、NYSEDが認める課程を出て、州の感染管理の研修を受け、NCLEX-PNに合格します。外国の課程で受ける場合、准看護の課程なら9か月以上あることが条件で、RNの課程を出た人もLPNの要件を満たします。免許と最初の登録の手数料は $143 です。
日本の准看護師と比べると、似ているところと違うところがあります。
- 似ているところ——日本の保健師助産師看護師法は、准看護師を「医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて」看護師と同じ業務を行う者と定めています。RNの監督のもとで働くLPNと、位置づけはよく似ています
- 違うところ——日本の准看護師は、国家試験ではなく准看護師試験を受け、都道府県知事から免許を受けます(看護師は国家試験と厚生労働大臣の免許)。アメリカでは、LPNもRNも同じ州の看護局が免許を出し、試験はどちらも全国共通のNCLEXです
数にも差があります。日本で働く准看護師は 233,022人で、看護師の1,363,142人の6分の1ほど。しかも前回の調査から8.4%減っています(令和6年末)。アメリカのLPNはRNの5分の1ほどです。
日本の准看護師がアメリカのRNを目指せるかどうかは、NYSEDが課程ごとに判断します。どこを見て判断されるかは受験資格の記事の7節に書きました。なお、VisaScreen(外国の医療職の資格審査)の対象職種には、RNと並んでLPN/LVNも入っています(8 CFR 212.15(c))。
5. APRN——4つの役割と、その土台にあるRNの免許
NCSBNは、APRNを4つの役割に分けています。
- ナースプラクティショナー(CNP)——一般にNPと呼ばれる
- 麻酔看護師(CRNA)
- 助産看護師(CNM)
- 専門看護師(CNS)
さらに、6つの対象集団——家族/生涯全体、成人・老年、女性の健康、小児、新生児、精神——のどれかで教育と認定を受けます。2008年にNCSBNなどがまとめた「APRNコンセンサスモデル」という枠組みで、どの州も同じ形に近づけることを目指しています。
役割ごとに、入口の条件が違います。
- 麻酔看護師——養成課程を認定する機関(COA)の方針で、2022年1月1日以降に入学する人は博士課程に入り、2025年1月1日からは、課程を出て仕事に就く人はみな博士号を持つことになっています。課程は最低36か月で、入学には集中治療の現場でのフルタイムの看護経験を最低1〜2年求めています
- NP——BLSのハンドブックの要件どおり、修士以上・州のRN免許・全国の認定試験・州のAPRN免許
NPが医師なしでどこまでできるかは、州で違います。AANPによると、NPが州の看護局の免許だけで患者を診て、診断し、検査を指示し、薬(規制薬物を含む)を処方できる「フル・プラクティス」の州は、27州とワシントンD.C.、属領2つです。
では日本はどうか。日本看護協会は、日本の看護職は医師の指示がなければ医行為を行えず、診断や処方もできないので、「米国等の『ナース・プラクティショナー』に相当する資格は現在の日本にはありません」と書いています。日本で「NP」「専門」と名のつくものは、次の3つです。
- 診療看護師(NP)——日本NP教育大学院協議会が認める大学院の課程を修了し、同協議会の認定試験に合格した看護師。協議会の認定で、2026年4月1日時点で1,118人
- 専門看護師・認定看護師——日本看護協会の資格認定制度。専門看護師は大学院修士課程の修了が条件で、14分野・3,644人(2025年12月末)。認定看護師は25,809人
- 特定行為研修——法律(保健師助産師看護師法37条の2)にもとづく研修で、修了した看護師は、医師があらかじめ作る手順書にしたがって38の特定行為を行えます。ただし、医師が自分で対応するか、どんな指示で看護師に任せるかを決めるのは医師のままだと厚生労働省は書いています。修了者は14,266人(令和8年3月)
つまり日本には、看護師の免許の上にもう1段の国の免許がありません。アメリカのAPRNは州の免許で、その土台がRNの免許です。日本の専門看護師や診療看護師の資格からアメリカのNPへ直接切り替える道は、今回確認した規則にはありませんでした。アメリカでNPを目指すなら、最初の一歩はNCLEX-RNでRNの免許を取ることです。
6. 看護助手——現場にいるが、看護師の免許ではありません
看護助手は1,448,910人で、RNの4割を超える大きな職種です。BLSの分類は、Certified Nurse Aide や Certified Nursing Assistant(CNA)をこの職種の例に挙げています。
看護助手は免許ではなく州の認定で働きます。介護施設(メディケア・メディケイドの長期療養施設)で働く看護助手の訓練は、連邦規則で75時間以上、そのうちRNかLPNの監督のもとでの実習が16時間以上と決まっています(42 CFR 483.152)。ニューヨーク州では、看護助手を認定するのはNYSEDではなく州の保健局です。
NCLEXは受けません。VisaScreenの対象職種にも、永住権の Schedule A にも、看護助手は入っていません。
7. NCLEXでは、この区分そのものが出題されます
ここまでの話は、キャリアの地図であると同時に、NCLEX-RNの出題範囲でもあります。2026年版のテストプランは、配点のいちばん大きい「ケアの管理」(Management of Care・15〜21%)の中に、「LPN/VN、補助者、ほかのRNが行うケアを委譲し、監督する」ことをはっきり挙げています。用語の定義では、処方や指示を出す primary health care provider に医師と並んでAPRNが入っています。
つまり試験では、自分がRNとして、LPNと看護助手に何を任せられるかが問われます。バンクの1問で見てみます。
The registered nurse (RN) on a medical-surgical unit is working with a licensed practical nurse (LPN) and unlicensed assistive personnel (UAP). Which tasks are most appropriate to assign to the LPN? Select all that apply.
内科・外科病棟のRNが、LPNと無資格の補助者(UAP)と一緒に働いている。LPNに割り当てるのが最も適切な業務はどれか。当てはまるものをすべて選べ。
- Administering the scheduled oral antibiotic to a client with cellulitis蜂巣炎の患者に、定時の内服抗菌薬を与薬する
- Evaluating the readiness of a client with a new colostomy to manage the care at home新しく人工肛門を造設した患者が、在宅でケアを管理できる状態かを評価する
- Transferring a client from the bed to a chair before the lunch tray arrives昼食が届く前に、患者をベッドから椅子へ移乗する
- Performing the sterile dressing change on a client's abdominal surgical wound腹部の手術創の無菌的なドレッシング交換を行う
- Changing the bed linens for a client who perspired heavily overnight夜間に大量に汗をかいた患者のシーツを交換する
正解:1・4
5つをRN・LPN・補助者の3つの箱に分けると答えが出ます。
RNの箱——2の「在宅でやれる状態かをevaluate(評価)する」。手技の習得、理解、気持ちの受け入れ、家の支えを合わせて判断するので、RNにしかできません。
補助者の箱——3の移乗と5のシーツ交換。LPNがやっても安全ですが、補助者にできることをLPNに回すと人の使い方が無駄になる。この問題は「LPNにできるか」ではなく「LPNに割り当てるのが最も適切か」を聞いています。
LPNの箱——残った1の定時の与薬と、4の指示が決まっている無菌操作。
ここがポイント:アメリカの看護職が3段に分かれていることが、そのまま問題の形になっています。判断はRNに、決まった手技と与薬はLPNに、日常生活の援助は補助者に。日本の病棟の感覚で「できる人がやる」と考えると、3と5を選んでしまいます。
出典:NCLEX BANK / 管理・リーダーシップ 🤝 Assignment/Delegation #2 Q14
委譲の考え方はNCLEXの委譲とアサインメントの記事で、線の引き方から詳しく扱っています。
まとめ
- アメリカの看護職は、免許で数えるとLPN(NCLEX-PN)・RN(NCLEX-RN)・APRNの3段。看護助手は免許ではなく州の認定で、NCLEXは受けない
- APRN(NP・麻酔看護師・助産看護師・専門看護師)は、RNの免許の上に大学院・全国の認定試験・州のAPRN免許を積む
- 2025年5月の年収中央値は、RN $97,550、LPN $64,400、NP $132,300、麻酔看護師 $236,590、看護助手 $42,260
- LPNは日本の准看護師に位置づけが近いが、免許を出すのはRNと同じ州の看護局で、試験は全国共通のNCLEX-PN
- NPが医師なしで診断・処方までできる州は、27州とD.C.と属領2つ。ニューヨーク州は3,600時間の経験で取り決めが不要になる(2030年7月1日まで)
- 日本には、看護師の上にもう1段の国の免許はない。診療看護師(NP)は協議会の認定、専門看護師・認定看護師は日本看護協会の認定
- 永住権の Schedule A に出てくるのは NCLEX-RN。日本の看護師がアメリカで最初に取るのは、どの道でもRNの免許
- NCLEX-RNは、RNがLPNと補助者に何を任せられるかを配点最大の領域で問う
よくある質問
アメリカの看護師にはどんな種類がありますか?
免許で数えると3つです。1年ほどの課程とNCLEX-PNで取るLPN(州によってはLVN)、看護教育とNCLEX-RNで取るRN、そしてRNの免許の上に大学院と全国の認定試験を積むAPRNです。APRNにはナースプラクティショナー(NP)、麻酔看護師(CRNA)、助産看護師(CNM)、専門看護師(CNS)の4つの役割があります。このほか、免許ではなく州の認定で働く看護助手(CNA)がいて、NCLEXは受けません。BLSの2025年5月の調査では、RNが3,379,720人でいちばん多い職種です。
アメリカでナースプラクティショナー(NP)になるには、どうすればいいですか?
BLSの職業ハンドブックによると、NPを含むAPRNは、修士以上の学位を持ち、その州のRNの免許を持ち、全国の認定試験に合格し、州のAPRNの免許を取る必要があります。上級の役割の教育に進む前にRNの免許が要るので、日本の看護師がNPを目指す場合も、最初の一歩はNCLEX-RNに合格してアメリカの州のRNの免許を取ることです。日本の診療看護師(NP)は日本NP教育大学院協議会の認定で、日本看護協会は米国等のNPに相当する資格は現在の日本にはないと書いています。
アメリカのLPNとRNは何が違いますか?
LPNは州が認める1年ほどの課程を修了してNCLEX-PNに合格し、RNは看護教育の課程を修了してNCLEX-RNに合格します。BLSの職業分類は、LPNを「RNの監督のもとで働くことがある」職種と書いています。2025年5月の年収中央値はLPNが$64,400、RNが$97,550です。永住権の手続きで労働証明を省ける Schedule A の条件に出てくるのはNCLEX-RNで、NCLEX-PNは出てきません。どちらの免許も州の看護局が出し、ニューヨーク州ではLPNの免許の手数料は$143です。
RNが医療専門職・技術職で最多・麻酔看護師が医師・歯科医師を除いて平均年収が最も高い・RNの州別平均($77,000〜$150,280):同上の公表文
RNの定義・CNSを含む・LPNはRNの監督のもとで働くことがある・看護助手の例:BLS 2018 SOC
LPNの課程は1年ほど・APRNは修士以上/RN免許/全国認定試験/州のAPRN免許・RN免許が先:BLS Occupational Outlook Handbook(LPN・APRNのページ)
APRNの4つの役割と6つの対象集団:NCSBN APRNs in the U.S.、Consensus Model for APRN Regulation(2008年)
APRNの定義にRNの免許:NCSBN Model Act(2021年改訂)
NCLEX-RN/NCLEX-PNの対象・委譲と監督・primary health care provider の定義:2026 NCLEX-RN Test Plan、2026 NCLEX-PN Test Plan
フル・プラクティスの州(27州・D.C.・属領2つ)・免許を持つNPは46万1,000人超:AANP Facts About NPs(2025年2月)、State Practice Environment(2026年5月更新)
麻酔看護師の博士課程・最低36か月・集中治療の経験:COA Accreditation Policies and Procedures(2026年6月改訂)、Requirements to Practice as a Nurse Anesthetist in the United States
Schedule A と professional nurse の定義:20 CFR 656.5(a)(2)(a)(3)(ii)
VisaScreen の対象職種:8 CFR 212.15(c)
看護助手の訓練(75時間・実習16時間):42 CFR 483.152
ニューヨーク州のLPNの要件・外国の准看護課程は9か月以上・手数料$143:NYSED Licensed Practical Nursing — License Requirements
ニューヨーク州のNPの認定・3,600時間・2030年7月1日まで:NYSED Nurse Practitioners — Certification Requirements、Practice Requirements、Education Law §6902、2026年法律第57号(A.10007-C)
看護助手の認定は州保健局・助産は別の職業:NYSED Practice Information for Nurse Practitioners
看護師・准看護師の定義と免許:保健師助産師看護師法5条〜8条(e-Gov法令検索)
就業看護師 1,363,142人・准看護師 233,022人:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
NPに相当する資格は日本にない:日本看護協会「ナース・プラクティショナー(仮称)制度構築」のページ
診療看護師(NP)の定義・資格認定者1,118人:日本NP教育大学院協議会
専門看護師 3,644人・認定看護師 25,809人:日本看護協会「資格認定制度」
特定行為研修・38行為・修了者14,266人:厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」
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