「NCLEXの受験資格」に一枚の答えはありません。問われるのは免許ではなく、受けた教育です
「NCLEXの受験資格」を検索しても、はっきりした答えが出てこないと感じたことはありませんか。それは探し方が悪いのではありません。一枚で答えられる機関が、そもそも存在しないからです。試験を作っているNCSBN自身が、受験資格は各州が決めるものだと書いていて、州ごとの要件の一覧は持っていないとまで明記しています。この記事では、その前提を確認したうえで、日本の看護師が実際に問われるのは何なのかを整理し、ニューヨーク州を例に条文の文言まで見ていきます。
1. 「NCLEXの受験資格」という一枚の答えはありません
まず、いちばん大事なところから。NCLEXを作っているNCSBNは、受験資格についてこう書いています。
(看護規制機関はそれぞれ、NCLEXを受けるための独自の受験資格要件を持っています)
NCSBN does not maintain a list of requirements for each NRB.
(NCSBNは、各看護規制機関の要件の一覧を保持していません)
2行目のほうが重要です。試験を作っている当の組織が、州ごとの受験資格をまとめていないと言っています。まとめサイトやエージェントのページに「NCLEXの受験資格はこれです」と書いてあったとしたら、それはどこかの州の条件か、誰かの要約です。
ですから、この問いは答えられる形に変える必要があります。「NCLEXの受験資格は何か」ではなく、「自分はどの州の、どの条件で引っかかるのか」です。この記事の残りは、その引っかかりどころを日本の看護師の側から並べ直したものです。
2. 問われるのは免許ではなく、受けた教育です
日本の看護師の多くが最初に確かめたいのは「自分の看護師免許で受けられるのか」だと思います。ところが、要件を読むとその欄がありません。ニューヨーク州がRNの免許に求めているのは、次の6つです。
- 善良な品性を備えていること(good moral character)
- 18歳以上であること
- NYSEDが認める看護教育課程を卒業していること
- ニューヨーク州が定める感染管理研修と、児童虐待の通報に関する研修を修了すること(免除規定あり)
- NCLEX-RNに合格すること(またはNYSEDが認める他の免許試験)
- NYSEDに免許を申請すること
この6つに、母国の看護師免許は入っていません。問われているのは3番目、受けた教育です。日本の看護師免許を持っていることは、それ自体が条件ではありません。
3. 「2学年以上」と書いてあります。学士は入口では要りません
では、どんな教育なら認められるのか。外国で看護教育を受けた人について、ニューヨーク州はこう定めています。
(米国およびその属領の外にある国における、2学年以上の一般看護教育課程で、NYSEDが認めるもの。当該国の免許当局または相当する政府機関が、その課程は卒業生を registered professional nurse としての実践に備えるものであるとNYSEDに証明しなければならない)
読みどころは2つあります。
1つめは「2学年以上」。日本の看護師になる道はいくつかありますが、3年課程の専門学校も、短期大学も、4年制大学も、いずれも2学年を超えています。学士号は、この入口の条件ではありません。
2つめは、証明するのが本人ではないこと。「その課程はRNとしての実践に備えるものだ」と言うのは、卒業生ではなくその国の当局です。だから次の節の書類の話が出てきます。
4. 学歴の確認には道が2つあり、片方は $485 がかかりません
教育が条件だとして、それをどうやってニューヨーク州に伝えるのか。ここに2つの選択肢があります。よく紹介されるのは片方だけなので、両方書いておきます。
- 選択肢1:TruMerit(旧CGFNS)のニューヨーク州向け資格確認サービスを使う。TruMeritが卒業校や免許当局から書類を集めて内容を確認し、報告書をNYSEDに送ります。費用がかかります
- 選択肢2:卒業した学校に Certification of Professional Education(Form 2F)を書いてもらう。学校がその用紙に記入し、公式の成績証明書などと一緒にNYSEDへ直接送ります。英語以外の言語の成績証明書は、NYSEDが認める翻訳業者による翻訳が必要です
そしてNYSEDは、この2つの間に自分から注意書きを置いています。
(注:ニューヨーク州向けのTruMeritの資格確認サービスを使う義務はありません。ただし、このサービスを使わずにRN免許を申請するのは、たいていより難しく、より時間がかかります)
「必須ではない。ただし楽ではない」と、州自身が書いているわけです。お金と手間のどちらを払うかという選択であって、片方しか道がないわけではありません。ここを知らずに申し込むと、選んだ自覚のないまま費用のかかるほうを選ぶことになります。
なお、どちらを選んでも原本は本人の手を経由しません。学校からNYSEDへ直接届く形でなければ有効になりません。自分で保管している卒業証明書を封筒に入れて送る、という解決策は使えないということです。まず母校の事務に話を通す——ここが両方に共通の出発点で、いちばん早く着手できる部分でもあります。
5. 英語の試験は、免許の要件ではありません
「NCLEXを受けるには英語の試験が要る」と書いてあるのを見たことがあるかもしれません。ニューヨーク州に関して言えば、違います。
前の節で並べた6つの要件にも、外国の看護学校を出た人向けの手順にも、英語試験の点数を求める記述はありません。NCLEXそのものにも受験の英語要件はありません。試験が英語で行われる、というのは別の話です。
では英語の点数を求められるのはどこか。ビザの段階です。アメリカで就労するために取る VisaScreen(医療職従事者証明書)の審査に、英語力の証明が含まれています。日本の看護学校を出た人は、この免除の一覧に入っていません。
6. SSNは要件ではありません。ただし1か所だけ出てきます
社会保障番号(SSN)は、米国内で就労や居住の実績がないと発行されません。日本にいるあいだに用意できる番号ではない、ということです。これを申請の条件にしている州があるため、州選びの分かれ目になります。
ニューヨーク州のRN免許の要件に、SSNはありません。ただし外国の看護学校を出た人向けの手順の中に、1か所だけ出てきます。
(過去30日以内にOnline Form 1の記入を開始している場合は、このリンクから続きを記入できます。申請にアクセスするには申請IDと社会保障番号と生年月日が必要です)
これは免許の条件ではなく、書きかけの申請を途中から再開するための本人確認です。裏を返すと、SSNを持っていない人にとって、この「途中から再開する」入口は使いにくいということになります。申請フォームは、中断しない前提で時間を取って始めたほうが安全です——書類と情報を手元にそろえてから開く、という意味です。
なお、すでに記入を終えたあとで書類を追加で提出するための入口は別にあり、そちらに必要なのは申請IDと生年月日だけです。
7. 准看護師の場合はどうなるか
結論から言うと、この記事で「大丈夫です」とも「無理です」とも書けません。判断するのはNYSEDだからです。ただ、条文のどこを見て判断されるかははっきりしています。
第3節で引いた条文には、その国の当局が「その課程は卒業生を registered professional nurse としての実践に備えるものである」と証明しなければならない、と書かれていました。日本の准看護師の養成課程は、制度上、准看護師になるための課程です。この一文に当てはまるかどうかが論点になります。
もうひとつ、アメリカの免許には LPN(Licensed Practical Nurse・准看護師に近い位置づけ)という別の区分があり、こちらは試験も NCLEX-PN という別の試験です。ニューヨーク州のLPN免許の要件は、17歳以上・高校卒業(または同等)・NYSEDが認める看護教育課程の卒業・感染管理研修・NCLEX-PN合格で、RNより軽くなっています。
いずれにせよ、自分の卒業課程が該当するかは、申請する州の看護局に直接確かめるのが唯一の確実な方法です。第1節のとおり、これを代わりに答えられる機関はありません。
8. 数字で見ると、ニューヨーク州は「海外にいる人の州」です
なぜこの記事はニューヨーク州を例にしているのか。州教育局が公開している免許統計が、その理由をそのまま示しています。2026年7月1日時点の、RN免許保持者の住所の内訳です。
- ニューヨーク州内 —— 278,300人
- アメリカ国内の他州 —— 132,843人
- アメリカ国外 —— 84,627人
- 合計 —— 495,770人
ニューヨーク州のRN免許を持つ人のおよそ6人に1人が、アメリカの外に住所を置いています。州内で免許保持者がいちばん多いのはナッソー郡の30,007人ですから、「アメリカ国外」はその2.8倍ということになります。
この数字が意味するのは、海外から申請する人がニューヨーク州にとって例外的な存在ではない、ということです。手順が整っているのも、この記事でここを例にしているのも、そこに理由があります。ただし、これは「ニューヨーク州が最善だ」という意味ではありません。州の条件は変わります。決める前に、自分で公式ページを見てください。
9. 条件を満たしても、順番を外すと受けられません
最後に、受験資格そのものではなく、その扱われ方について1つ。NYSEDは、外国の看護学校を出た人向けの手順にこう書いています。
(注意:NYSEDがRN免許の申請と学歴の審査を終えるまで、Pearson VUEはNCLEX-RNを受けさせません)
受験料を先に払っても、審査が終わっていなければ受けられないということです。しかもPearsonの登録には365日の有効期限があり、その間に受験資格が出なければ受験料ごと失効します。受験資格を満たしていることと、受験できる状態になっていることは別です。この順番は受験手続きの記事で詳しく扱っています。
まとめ
- 「NCLEXの受験資格」の統一された答えはありません。NCSBN自身が、各州が決めるもので一覧は持っていないと書いています
- 問われるのは母国の免許ではなく、受けた教育です。ニューヨーク州の6要件に「母国の看護師免許」は入っていません
- 条文は「2学年以上」。3年課程の専門学校も大学も満たします。学士は入口の条件ではありませんが、免許後10年以内に求められます(BSN in 10)
- 学歴の確認には道が2つあります。TruMeritのサービスは必須ではないと州自身が書いています。ただし使わないほうが難しく時間がかかる、とも書いています
- 英語試験はニューヨーク州の免許要件ではありません。求められるのはビザの段階(VisaScreen)です
- SSNも要件ではありません。出てくるのは、書きかけの申請を再開するときだけです
- 自分の課程が該当するかは、申請する州の看護局に直接確かめてください。代わりに答えられる機関はありません
よくある質問
日本の看護師免許がないとNCLEXは受けられませんか?
ニューヨーク州の場合、免許そのものは要件に入っていません。同州がRNの免許に求めるのは、善良な品性・18歳以上・NYSEDが認める看護教育課程の卒業・州が定める研修の修了・NCLEX-RN合格・申請の6つで、母国の免許はこの中にありません。問われるのは受けた教育のほうです。ただし外国で看護師の免許を受けたことがある人は、その免許を出した機関からNYSEDへ証明を送ってもらう必要があります。条件ではなく追加の提出物、という位置づけです。なお受験資格の条件は州ごとに違うので、ほかの州に申請するならその州の看護局で確認してください。
看護専門学校の3年課程でもNCLEXを受けられますか?大学を出ている必要はありますか?
ニューヨーク州の条文は、米国外の教育について「2学年以上の一般看護教育課程で、その国の当局がRNとしての実践に備える課程だと証明するもの」と定めています。3年課程の専門学校も短期大学も4年制大学も、いずれも2学年を超えています。学士号は入口の条件ではありません。ただしニューヨーク州にはBSN in 10という決まりがあり、免許を受けてから10年以内に看護学の学士以上を取ることが求められます(免除に当たる人を除く)。2026年4月29日には、その免除の条件を明確にする規則改正が施行されました。
NCLEXを受けるのに英語の試験(IELTSやTOEFL)は必要ですか?
NCLEXそのものに英語試験の要件はありません。ニューヨーク州のRN免許の要件にも、外国の看護学校を出た人向けの手順にも、英語試験の点数を求める記述はありません。英語力の証明が求められるのは、アメリカで働くためのビザの前に取るVisaScreenの段階です。ただし州によっては免許の段階でIELTSやTOEFLなどの点数を求めるところがあり、基準点も州ごとに違います。申請する州の看護局の公式ページで確認してください。
ニューヨーク州のRN免許の6要件・米国外の教育は「2学年以上」でその国の当局の証明が要ること・免許は一生有効で登録は3年ごと・申請と初回登録 $143・BSN in 10と2026年4月29日施行の規則改正:NYSED Office of the Professions — RN License Requirements(op.nysed.gov/
学歴確認の2つの選択肢・TruMeritのサービスは必須ではないという注記・Form 2Fと翻訳・外国免許の証明(Form 3F)・途中再開にSSNが要ること・NYSEDの審査完了までPearson VUEが受験させないこと:NYSED — RN Pathway #5(同サイト license-requirements/
LPNの要件(17歳以上・高校卒業・NCLEX-PN):NYSED — License Requirements: LPN(同サイト)
RN免許保持者の住所別内訳(2026年7月1日時点・州内278,300/他州132,843/国外84,627/合計495,770・ナッソー郡30,007):NYSED — License Statistics(同サイト)
Pearsonの登録が365日で失効すること:NCSBN NCLEX Examination Candidate Bulletin(2026年4月版)
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