アメリカの看護師の永住権は、NCLEXの合格で並べる「列」です。2026年9月は、2024年9月1日より前に並んだ人の番です
アメリカの看護師の永住権(グリーンカード)には、ほかの職種にはない特徴が3つあります。①看護師は「人手が足りない職種」として連邦規則にあらかじめ載っていて、雇用主は求人広告で「アメリカ人の応募者がいない」ことを示す手続きを省ける。②その条件のひとつが、NCLEXの合格。③あとは順番待ち——列の進み具合は、国務省が毎月出す「ビザ公報」で決まります。この記事では、その3つを連邦規則・USCIS・国務省の原文で確かめ、どれだけ待つのかを公表されている数字だけで並べます。
1. 看護師は「人手が足りない職種」として規則に載っています
アメリカの雇用ベースの永住権は、ふつう雇用主が労働省に「この仕事にアメリカ人の応募者がいなかった」ことを証明するところから始まります。求人広告を出し、応募者を審査し、その結果を労働省に認めてもらう——この「労働市場テスト」だけで長い時間がかかります。
看護師は、この段を飛ばせます。労働省の規則(20 CFR 656.5)は、アメリカ人の働き手が足りないと労働省があらかじめ判断した職種を「Schedule A」という一覧にしていて、その Group I に載っているのは理学療法士と看護師の2つだけです。
Schedule A の職種では、雇用主は労働省に申請しません。労働証明の申請書(ETA-9089)を認定を受けないまま、移民申請書(I-140)に添えてUSCISに直接出します。雇用主がその前にやることは、おもに2つです。
- その地域の標準賃金を労働省に決めてもらう(ETA-9141)。提示する給料はその100%以上でなければなりません
- 職場に求人の告知を10営業日つづけて掲示する。掲示はI-140を出す日の30〜180日前に済ませます
なお看護師は、ほかの職種と同じ通常の労働証明には回れません。規則は、看護師の労働証明はSchedule A の手続きでしか申請できないと定めています。
2. 条件のひとつがNCLEX合格——受かる前は、列に並べません
Schedule A で看護師として申請するには、本人が次の3つのうちどれか1つを満たしている必要があります(20 CFR 656.5(a)(2))。
- 働く予定の州の、制限のない正式な看護師免許を持っている
- TruMerit(旧CGFNS)の証明書を持っている
- NCLEX-RNに合格している
USCISの政策マニュアルは、これを「I-140を出す日の時点で」満たしていなければならないと書いています。そして州の免許はNCLEXに受からないと取れません。つまり3つのうち2つはNCLEXを通る道です。残る TruMerit の証明書(Certification Program・$495・約78,000円)は、TruMerit自身が「NCLEXの国際会場で受験できない看護師のための制度」と説明していて、独自の試験があります。日本には大阪と新宿にNCLEXの会場があります。
ここで大事なのが、順番待ちの列に並んだ日=「優先日(Priority Date)」の決まり方です。Schedule A の場合、優先日はI-140がUSCISに正式に受理された日です(8 CFR 204.5(d))。NCLEXの合格でI-140を出すなら、合格する日が遅れれば、列に並ぶ日もそのまま遅れます。永住権の順番待ちは、NCLEXのあとに付け足される時間ではありません。NCLEXの合格で申請するなら、受かるまでは始まることすらできない時間です。
3. 区分は多くがEB-3——公報で見るのは「3rd」の行です
雇用ベースの永住権には優先順位の区分があります。USCISの政策マニュアルは看護師について、こう書いています。
- 看護職の最低要件はふつう学士未満なので、「熟練労働者」として扱う(第3優先=EB-3)
- 学士が最低要件になる専門的な看護職は「専門職」として扱える(これもEB-3)
- ときどき、上級学位を要する職として第2優先(EB-2)で申請されることもある
熟練労働者と専門職はどちらも、ビザ公報では同じ「3rd」の行です。どの区分で申請するかは、仕事の中身と要件をもとに雇用主が決めます。
4. ビザ公報の読み方——行は区分、列は国
永住権の数には年ごとの上限があり、1つの国に配れるのは全体の7%までです。申請者が枠を超える区分では、優先日の古い順にビザが配られます。その「いまどこまで配っているか」を毎月発表するのが、国務省のビザ公報(Visa Bulletin)です。
表の行は区分(1st・2nd・3rd…)、列は国です。独立した列を持っているのは、申請者が上限に達している中国(本土生まれ)・インド・メキシコ・フィリピンだけで、日本も韓国も「All Chargeability Areas Except Those Listed(上記以外のすべての国)」の列を見ます。
表は2種類あります。
- Final Action Dates(最終処理日)——優先日がこの日付より前なら、ビザを出してよい。面接の予約はこの表で決まります
- Dates for Filing(申請受付日)——優先日がこの日付より前なら、国立ビザセンター(NVC)に書類を出しはじめてよい(NVCから案内が届いてから)
欄の中が日付なら、その日より前に並んだ人まで番が来ています。「C」(Current)なら待ちはありません。
2026年9月号の、日本・韓国が入る列のEB-3(3rd)はこうです。
- 最終処理日:2024年9月1日——ビザを受け取れるのは、優先日がこれより前の人。公報の月との差はちょうど2年
- 申請受付日:C——I-140が承認されていれば、優先日に関係なくNVCに書類を出せる
- 参考:フィリピンの列は同じ月の最終処理日が2023年8月1日。日本・韓国の列より約1年うしろです
規模の感覚として、国務省の年次統計(2024年度)では、EB-3の熟練労働者・専門職の枠で永住権を得た人(移民ビザの発給と米国内での切り替えの合計)は、日本が271人、韓国が1,550人、フィリピンが9,111人、全体で38,566人でした。これは看護師以外の職種も含んだ数です。
5. 列は後ろにも下がります——2020年からの動き
ビザ公報の日付は、前に進むだけではありません。日本・韓国の列のEB-3の最終処理日を、2020年からたどるとこうなります。
- 2020年10月号〜2023年4月号:C——31か月つづけて待ちなし
- 2023年5月号:2022年6月1日——初めて日付が付く
- 2023年8月号:2020年5月1日——公報の月から3年3か月うしろまで下がる
- 2023年10月号:2021年12月1日——会計年度が変わって戻る
- 2024年9月号:2020年12月1日——年度末にまた下がる
- 2024年10月号:2022年11月15日——年度が変わって戻る
- 2025年9月号:2023年4月1日
- 2026年3月号:2023年10月1日
- 2026年4月号:2024年6月1日——1か月で8か月分進む
- 2026年9月号:2024年9月1日
2023年と2024年は、どちらも会計年度の終わり(7〜9月)に下がって、10月に戻っています。アメリカの会計年度は10月に始まり、そこで新しい年の枠が配られるからです。一度「C」だった列が3年以上うしろに下がったこともある——公報の日付は約束ではないということです。
新しい会計年度の最初の号になる2026年10月号は、9月24日の時点でまだ出ていません。次の号が出たら、まず日本・韓国の列の3rdの行を見てください。
6. 期間——合計を出してくれる公式の数字はありません
「看護師の永住権は何年かかるか」に、公的機関の答えはありません。かわりに、別々に進む3つの時計の数字が公表されています。
- I-140の審査——USCISの処理期間ページには「Schedule A Nurses」という看護師専用の区分があり、80%が25.5か月以内に終わっています(過去6か月の実績)。USCISは、ビザ公報で番が来ている案件を優先して審査すると書いています。雇用主が追加料金 $2,965(約47万円)を払うプレミアム処理なら、15営業日以内に結論が出ます
- ビザ公報の列——2026年9月号で2年分
- NVC——2026年9月21日の時点で、USCISから届いた案件の登録は9月1日の分(約3週間待ち)、本人が出した書類の審査は7月28日に出された分(約8週間待ち)まで進んでいます
この3つは足し算になりません。優先日はI-140を出した日に決まるので、I-140の審査を待つあいだにも列は前に進んでいます。はっきり言えるのは、公報の日付が自分の優先日を追い越すまでは、面接の予約が入らないということだけです。
7. 本人が用意するもの——日本の場合
I-140が承認されると案件はNVCに移り、ここから先は本人の手続きです。移民ビザの面接は東京のアメリカ大使館で受けます(那覇の総領事館も移民ビザを扱っています)。大使館の案内から、日本の看護師に関係するものを抜き出します。
- 移民ビザ申請書(DS-260)と申請料 $345(約55,000円)
- 戸籍謄本(全部事項証明書)と英訳
- 犯罪経歴証明書——住所地の都道府県警察本部に本人が出向いて申請し、2〜3週間かかります。⚠️ 封をされた封筒で渡され、開けると無効です。NVCには封筒のコピーだけを送り、原本は封をしたまま面接に持っていきます
- 健康診断——大使館が指定した医師でしか受けられません。結果は最長6か月有効で、ビザの有効期限もふつう健康診断から6か月です
- VisaScreen(医療職従事者証明書)$740(約117,000円)——看護師は面接でこれを示す必要があります(8 CFR 212.15)。英語試験の点数もここで求められます
- 雇用主の採用通知——会社のレターヘッドに署名入りで、面接の1か月前以内に出されたもの
- パスポート——入国予定日から6か月以上の残りがあるもの
ビザが出たら、USCISの移民手数料 $235(約37,000円)を払います。USCISは渡米の前に払うよう勧めています(入国後でも払えますが、払うまでグリーンカードは届きません)。入国は、ビザの有効期限(ふつう健康診断から6か月)までに。グリーンカードは入国後、アメリカの住所へ郵送されます。VisaScreen の中身と英語の基準点はアメリカで看護師になるにはに、免許のしくみは合格後の免許の記事にまとめています。
8. お金——雇用主の分と、本人の分
政府に払う手数料は、払う人が分かれています。
- 雇用主:I-140 の申請料 $715(オンラインなら $665)+亡命プログラム手数料 $600(小規模の雇用主は $300、非営利団体は $0)。プレミアム処理を使うなら $2,965
- 本人:移民ビザ申請料 $345 + USCISの移民手数料 $235 + VisaScreen $740 = $1,320(約21万円)。これに健康診断の費用(病院に直接払う)と書類の取得費が加わります
9. 番が来たら、止まらずに動く
長い順番待ちのあとには、今度はこちら側の期限があります。
- 1年ルール——NVCからビザが使えるようになったと通知されてから1年以内に申請しないと、請願が取り消され、優先日を失います(移民国籍法203条(g))。2年以内に「本人にはどうにもできない理由だった」と示せれば、元に戻せることがあります
- 面接の延期——大使館は、延期した先の日付でビザがまだ残っている保証はない、延期を決める前にビザ公報をよく見るように、と案内しています。列が後ろに下がれば、次の予約は入りません
- 仕事を辞めるのはビザを手にしてから——大使館は、移民ビザを受け取るまで家や車を売ったり、仕事を辞めたり、払い戻しのできない航空券を買ったりしないよう書いています
そして入国後について、大使館は1年を超えてアメリカの外にいると永住者の資格を失うと案内しています。日本の家族のもとへ長く戻る予定があるなら、渡米の前に確かめておく必要があります。
まとめ
- 看護師は Schedule A の職種で、雇用主は労働市場テスト(求人広告)を省いてUSCISに直接申請できる
- 条件は「州の免許・TruMeritの証明書・NCLEX合格」のどれか1つ。I-140を出す日までに満たしている必要がある
- 優先日=I-140が受理された日。NCLEXで申請するなら、合格が遅れれば列に並ぶ日も遅れる
- 看護師の多くはEB-3。公報では「3rd」の行、日本と韓国は「All Chargeability」の列を見る
- 2026年9月号の最終処理日は2024年9月1日(2年分)、申請受付日は C
- 列は下がることがある。2023年8月には2020年5月1日まで後退した。2026年10月号は9月24日時点で未掲載
- 期間の公式な合計はない。I-140は80%が25.5か月以内(プレミアムなら15営業日)、NVCは登録に約3週間・審査に約8週間
- 本人が政府に払うのは $1,320(約21万円)+健康診断。労働証明の費用を雇用主が本人から取ることは規則で禁じられている
よくある質問
日本の看護師がアメリカの永住権(グリーンカード)を取るには、どうすればいいですか?
アメリカの雇用主に、移民申請書(I-140)を出してもらう必要があります。本人が自分で申請することはできません。看護師は労働省の「Schedule A」という人手不足の職種の一覧に載っているので、雇用主は求人広告で米国人の応募者がいないことを示す手続き(労働市場テスト)を省いて、USCISに直接申請できます。本人の側の条件は、働く州の正式な看護師免許・TruMerit(旧CGFNS)の証明書・NCLEX-RNの合格のどれか1つを、I-140を出す日までに満たしていることです。承認後は国立ビザセンター(NVC)で書類を出し、東京のアメリカ大使館で面接を受けます。
アメリカの看護師の永住権は、何年かかりますか?
公的機関が出している合計の期間はありません。公表されているのは3つの数字です。I-140の審査は、USCISの「Schedule A Nurses」の区分で80%が25.5か月以内(雇用主が$2,965を払うプレミアム処理なら15営業日以内)。ビザの順番待ちは、2026年9月のビザ公報で日本・韓国のEB-3が2024年9月1日までなので、2年分です。国立ビザセンター(NVC)は、2026年9月21日時点で案件の登録に約3週間、書類の審査に約8週間かかっています。これらは同時に進むので単純な足し算にはならず、公報の日付は後ろに下がることもあります(2023年8月には2020年5月1日まで後退しました)。
NCLEXに合格する前に、永住権の申請はできますか?
NCLEXの合格を条件にするなら、できません。看護師として Schedule A で申請するには、州の正式な看護師免許・TruMeritの証明書・NCLEX-RNの合格のどれか1つを、I-140を出す日の時点で満たしている必要があります。州の免許もNCLEXに受からないと取れないので、3つのうち2つはNCLEXを通る道です。そして順番待ちの起点になる優先日は、I-140がUSCISに受理された日です。NCLEXの合格で申請する場合、合格が遅れれば、列に並ぶ日もそのぶん遅れます。
Schedule A はUSCISに申請する・標準賃金と告知・看護師は通常の労働証明に回れない:20 CFR 656.15、20 CFR 656.10(d)
労働証明の費用を本人から受け取ることの禁止・天引きも含む・本人の弁護士費用:20 CFR 656.12(b)
優先日はI-140が受理された日・申請できるのは米国の雇用主・熟練労働者と専門職の定義:8 CFR 204.5(c)(d)(l)
条件はI-140を出す日の時点で満たすこと・看護職は多くが熟練労働者(EB-3)・人材会社の例・標準賃金の有効期間:USCIS Policy Manual, Volume 6, Part E, Chapter 7(2026年9月23日時点)
ほとんどのRN職はH-1Bに当たらない:USCIS PM-602-0104, Adjudication of H-1B Petitions for Nursing Occupations(2015年2月18日)
TruMerit Certification Program $495・NCLEXの国際会場で受けられない看護師のための制度:TruMerit Fee Schedule、Services(trumerit.org)
2026年9月号の表・フィリピンの日付・国ごとの上限7%・日付を進めた理由と後退の可能性:国務省 Visa Bulletin For September 2026(travel.state.gov)
2020〜2026年の日付の推移:国務省 Visa Bulletin 各月号(2020年10月号〜2026年9月号)
75か国の移民ビザ発給停止と2026年8月21日の失効:国務省 Immigrant Visa Processing Updates for Nationalities at High Risk of U.S. Public Benefits Reliance(2026年8月28日更新)
日本・韓国・フィリピンのEB-3の人数:国務省 Report of the Visa Office 2024, Table V (Part 2)
I-140の処理期間(Schedule A Nurses・80%が25.5か月)と公報に沿った優先処理:USCIS Check Case Processing Times(egov.uscis.gov)
I-140 $715/$665・亡命プログラム手数料・プレミアム処理 $2,965 と15営業日・移民手数料 $235:USCIS G-1055 Fee Schedule、How Do I Request Premium Processing?
移民ビザ申請料 $345:国務省 Fees for Visa Services
NVCの処理状況・1年以内に申請しないと優先日を失うこと:国務省 NVC Timeframes
面接の書類・健康診断・延期と公報・仕事を辞めないこと・1年を超える出国:国務省 U.S. Embassy Tokyo, Japan(移民ビザ案内)
日本の犯罪経歴証明書(封筒を開けると無効・NVCにはコピー)・戸籍:国務省 Japan Reciprocity Schedule
為替 1ドル=158.1円:2026年9月24日 00:02 UTC 時点のレート(exchangerate-api)
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