領域別 ・ 消化器

NCLEXの消化器は「当然の所見」と「起きてはいけない所見」を分ける

消化器の問題は、覚えることが多い領域に見えます。肝臓、胆嚢、膵臓、腸、ストーマ、経管栄養——範囲が広く、しかもどれも似た症状を出す。でもNCLEXが実際に問うているのは、その病気なら当然出る所見と、起きてはいけない所見を分けられるかだけです。選択肢の3つは「当然」で、1つだけ「起きてはいけない」が混ざっている。この記事では、その線を3本引いてから、実際にNCLEX BANKに収録している問題を3問解きます。英語の用語にはすべて日本語をつけます。

この記事の使い方 連載第4回で使った「予想内か、予想外か」という物差しを、そのまま消化器に当てる回です。あちらが物差しの作り方、こちらがその当て方になります。

1. 消化器で探すのは、3つだけ

臓器ごとに症状を覚えようとすると、肝硬変だけで10個以上あります。腹水、黄疸、掻痒、クモ状血管腫、手掌紅斑、腹壁静脈の怒張、女性化乳房、羽ばたき振戦——全部書けても、問題は解けません。そのほとんどが「進行した肝硬変なら出ていて当たり前」だからです。

NCLEXが「すぐ動け」と言わせたいのは、いつも次の3つのどれかです。

この記事の結論 ① 穴が開いた(穿孔・腹膜炎)
腹壁が板のように硬い、反跳痛、発熱、腸蠕動音の消失。

② 出血している(消化管出血)
黒いタール便、吐血、コーヒー残渣様の嘔吐、頻脈、血圧低下。

③ 血が通っていない(虚血・壊死)
ストーマの色が蒼白・暗紫・黒、絞扼された腸、強い痛みのわりに所見が乏しい。

この3つ以外は、たいてい待てます。逆に言えば、選択肢を読むときは「この3つのどれかに当たるか」だけを見ればいい。当たらないものは、どれだけ不快そうでも、どれだけ数字が派手でも後回しです。

疑うものそれを示す所見間違えやすい「当然の所見」
穿孔
穴が開いた
abdominal rigidity(腹壁の板状硬)
rebound tenderness(反跳痛)
発熱/腸蠕動音の消失
内視鏡後の腹部膨満・げっぷ
送気のせいで、ほぼ全員に出る
出血
中で血が漏れている
melena(黒色タール便)
hematemesis(吐血)
頻脈・血圧低下・ふらつき
生検後の血が混じった唾液
粘膜をつまめば少しは出る
虚血
血が通っていない
ストーマがpale / dusky(蒼白・くすんだ暗色)
冷たい/黒ずむ
ストーマ清拭時のわずかな出血
血管に富む組織なので当然
「当然の所見」は、消すためにある 消化器の選択肢に並ぶ黄疸・腹水・掻痒・膨満感・少量の出血は、正解を隠すために置かれています。どれも本物の所見で、しかも患者は実際につらい。だから目が行く。

判断の基準は「つらそうかどうか」ではなく、「その診断名から予想できるかどうか」です。予想できるものは、看護計画の対象ではあっても、今すぐ医師を呼ぶ理由にはなりません。

2. 例題① 内視鏡のあとの腹痛

1問目は穿孔です。検査そのものは無事に終わっていて、患者は病棟に帰ってきています。

例題 1 ・ 四択
問題文

A client returns to the unit 2 hours after an esophagogastroduodenoscopy and now reports worsening abdominal pain. Upon assessment, which finding would necessitate immediate follow-up?

上部消化管内視鏡(esophagogastroduodenoscopy)から2時間後に病棟へ戻った患者が、腹痛の増悪を訴えている。アセスメントで、ただちに対応を要する所見はどれか。

選択肢
  1. Temperature of 101.4°F (38.6°C) with abdominal rigidity体温 38.6℃(101.4°F)と、腹壁の板状硬
  2. Small amount of blood-tinged saliva少量の血が混じった唾液
  3. Reports of bloating and belching腹部膨満感とげっぷ
  4. Blood pressure of 118/74 mm Hg血圧 118/74 mmHg

正解:1
内視鏡のあとの合併症で、看護師が探しているものは1つだけです。perforation(穿孔)——スコープが通った管に穴が開いていないか。

穴が開くと消化液が腹腔に漏れ、peritonitis(腹膜炎)になります。そのときに出るのが発熱と、腹壁の板状硬です。腹膜が刺激されると腹筋が反射的に硬くなり、触れると板のように感じられる。これは「痛がっている」のとは別物で、患者の意思では緩められません。

2の血が混じった唾液は、生検や粘膜への接触があれば起こります。少量なら予想内。3の膨満感とげっぷは、検査中に空気を送り込むためほぼ全員に出ます。4の 118/74 は正常値で、そもそも異常ですらありません。

ここがポイント:この問題は「腹痛が強くなった」という主観の後ろに、板状硬という他覚所見を置いています。訴えではなく、触ってわかる所見のほうを見てください。

出典:NCLEX BANK / 成人看護 🥗 Gastrointestinal/Nutrition #1 Q7

同じ形は、ほかの検査でも出ます 大腸内視鏡のあとの強い腹痛・発熱・腹部膨隆、腹腔穿刺のあとの血圧低下、生検のあとの穿刺部位の腫脹「処置のあとに、その処置で起こりうる最悪のことが起きていないか」——消化器の術後・検査後の問題は、ほぼこの一問一答です。

3. 肝硬変は「当然の所見」の塊です

2問目は肝硬変です。ここは予想内の所見がいちばん多く並ぶので、線引きの練習になります。

まず、肝臓が壊れると何が起きるかを2本に分けます。臓器を1つずつ覚えるのではなく、詰まる(圧)と、解毒できない(毒)の2本です。

肝硬変は「圧」と「毒」で読む 圧=血が肝臓を通れない(portal hypertension/門脈圧亢進)
行き場を失った血が回り道を探す。→ esophageal varices(食道静脈瘤)、腹壁静脈の怒張、脾腫。水は血管から漏れる。→ ascites(腹水)、末梢の浮腫。

毒=アンモニアを処理できない
腸で作られたアンモニアが脳に届く。→ hepatic encephalopathy(肝性脳症)。まず出るのは意識と行動の変化で、次に asterixis(羽ばたき振戦)

この地図の上で、腹水・黄疸・掻痒はすべて「圧」と「胆汁」の当然の帰結です。進行した肝硬変で出ていないほうが珍しい。一方、静脈瘤が破れて出血するのはいつ起きてもおかしくないが、起きたらその場で命に関わる——予想外の側です。

例題 2 ・ 四択
問題文

A nurse is assessing a client with advanced liver cirrhosis. Which finding requires the nurse to intervene immediately?

進行した肝硬変(advanced liver cirrhosis)の患者をアセスメントしている看護師。ただちに介入を要する所見はどれか。

選択肢
  1. Passage of a black, tarry stool黒いタール状の便が出た
  2. Firm, distended abdomen with a fluid wave硬く膨隆した腹部と、波動(fluid wave)
  3. Yellow discoloration of the sclera強膜の黄染
  4. Pruritus of the arms and legs上肢と下肢の掻痒

正解:1
melena(黒色タール便)は、上部消化管で出血し、その血が腸を通ってきたという意味です。胃酸と腸内細菌にさらされた血液が黒くなる。肝硬変でこれが出たら、まず疑うのはesophageal varices(食道静脈瘤)からの出血です。

静脈瘤は門脈圧に押されて膨らんだ血管で、破れると短時間で大量に出ます。しかも肝硬変では凝固因子が作れず、血小板も脾腫で減っているので、止まりにくい。「今日の当直に伝えておこう」ではなく、その場で動く所見です。

2の波動を伴う腹部膨隆はascites(腹水)、3の強膜黄染はjaundice(黄疸)、4の掻痒は皮膚に沈着した胆汁酸によるもの。3つとも、進行した肝硬変であれば予想される所見です。看護計画は必要ですが、緊急ではありません。

ここがポイント:2〜4は「見た目がつらい」順に並んでいます。腹が張って、黄色くて、かゆい。それでも選ぶのは、いちばん地味な「便の色」です。

出典:NCLEX BANK / 成人看護 🥗 Gastrointestinal/Nutrition #1 Q2

肝硬変で、もう1つだけ覚える薬 lactulose(ラクツロース)は、便としてアンモニアを外に出すために使います。だから下痢は副作用ではなく、効いている証拠です。目標は軟便が1日2〜3回。

NCLEXでは「下痢をしているので中止した/止痢薬を出した」という選択肢が誤りとして出ます。逆に、投与しても意識レベルが改善しないときは報告です。判断の基準は回数ではなく、意識が戻ってきているか

4. ストーマは、色で読む

3問目はストーマです。ここは知識がほぼ要りません。血が通っている色をしているか、それだけです。

正常か、報告か 正常=鮮紅色〜ピンク、光沢があり、湿っている。口の中の粘膜と同じ見た目です。触っても痛みはなく、清拭でわずかに出血することがあります(血管が豊富なため)。

報告=蒼白・暗紫・灰・黒。乾いている。血が届いていないか、すでに壊死している。

造設直後は浮腫んでいるのが普通で、数週間かけて縮みます。便がすぐ出ないのも異常ではありません(結腸ストーマでは数日かかることもあります)。
例題 3 ・ 四択
問題文

During the first postoperative assessment of a newly created colostomy, which stoma finding should the nurse report to the health care provider immediately?

造設直後のコロストミーを術後はじめてアセスメントしている。ただちに医師へ報告すべきストーマの所見はどれか。

選択肢
  1. Pale, grayish surface with a dusky hue蒼白で灰色がかった、くすんだ色調
  2. Bright red, shiny, and moist appearance鮮紅色で、光沢があり湿潤している
  3. Small amount of blood oozing when gently cleaned愛護的に清拭したときの、わずかな出血
  4. No stool output during the first several hours最初の数時間、便の排出がない

正解:1
ストーマは腸の粘膜を体表に出したものです。血が通っていれば、口の中と同じ鮮紅色になります。

蒼白・灰色・暗紫は、ischemia(虚血)のサインです。縫合部の緊張や血管の捻れで血流が届いていない状態で、放置すればnecrosis(壊死)に進み、再手術になります。色は元に戻りません。だからその場で報告します。

2はまさに正常な所見です。3の少量の出血も正常——粘膜は血管に富むので、拭けば少しにじみます。持続する出血や、装具の中に溜まるほどの出血なら別ですが、この選択肢はそう書いていません。4の「数時間、便が出ない」も予想内で、術後の腸が動き出すまでには時間がかかります。

ここがポイント:選択肢に「出血」という言葉があると、つい選びたくなります。でもストーマでは色のほうが緊急度が高い。量ではなく色を見てください。

出典:NCLEX BANK / 成人看護 🥗 Gastrointestinal/Nutrition #3 Q1

栄養の合併症も、同じ読み方でいけます 経管栄養で下痢——まず疑うのは速度と濃度、そして注入時間です。いきなり中止ではありません。
TPN中に口渇・頭痛・多尿——高血糖です。ブドウ糖濃度の高い輸液を中心静脈から入れているので、当然起こりうる。血糖を測ります。
長期の低栄養から栄養を再開したあと——refeeding syndrome(リフィーディング症候群)。細胞が一斉に栄養を取り込み、血中のリン・カリウム・マグネシウムが落ちます。見るのは体重ではなく電解質です。
胃切除後、食事の15〜30分後にふらつき・発汗——dumping syndrome(ダンピング症候群)。少量頻回、水分は食間、高蛋白・低炭水化物、食後は横になる。

まとめ

消化器でやることは、3つだけです。

  1. 3つのどれかを探す — 穴が開いた(板状硬・反跳痛・発熱)、出血している(黒色便・吐血・頻脈)、血が通っていない(ストーマの色)
  2. 診断名から予想できる所見は消す — 肝硬変の腹水・黄疸・掻痒、内視鏡後の膨満とげっぷ、ストーマ清拭時のわずかな出血
  3. 処置のあとは、その処置の最悪を疑う — 内視鏡なら穿孔、腹腔穿刺なら血圧低下、ストーマ造設なら虚血

覚える英単語は15語ほどです。rigidityrebound tendernessmelenahematemesisdusky の5語は、消化器に限らず「すぐ動け」を示す合図として、どの領域でも同じ意味で出てきます。

よくある質問

NCLEXの消化器で「すぐ報告」すべき所見は何ですか?

3つに絞れます。①穿孔・腹膜炎を示す所見——腹壁の板状硬(rigidity)、反跳痛(rebound tenderness)、発熱、腸蠕動音の消失。②消化管出血を示す所見——黒色タール便(melena)、吐血(hematemesis)、コーヒー残渣様の嘔吐、頻脈や血圧低下。③虚血を示す所見——ストーマの蒼白・暗紫・黒色。この3つ以外は、患者がつらそうに見えても優先度は下がります。判断の基準は症状の強さではなく、その診断名から予想できるかどうかです。

肝硬変の腹水や黄疸は、報告しなくていいのですか?

進行した肝硬変では予想される所見なので、それ単独では緊急ではありません。ただし「変化の速さ」は別です。腹囲が短期間で急に増えた、呼吸が苦しくなった、意識レベルや行動が変わった——これらは報告します。とくに意識・行動の変化は肝性脳症の最初のサインで、羽ばたき振戦(asterixis)より先に出ます。ラクツロースを投与している患者では、下痢の回数ではなく意識が改善しているかどうかで効果を判断してください。

経管栄養やTPNで、最初に疑う合併症は何ですか?

経管栄養で下痢が出た場合は、注入速度・濃度・注入時間をまず確認します。いきなり中止する選択肢は通常誤りです。TPNで口渇・頭痛・多尿が出たら高血糖を疑い、血糖を測定します。ブドウ糖濃度の高い輸液を投与しているため予想される合併症です。長期の低栄養状態から栄養を再開した患者では、リフィーディング症候群を疑い、リン・カリウム・マグネシウムを確認します。開始後5日以内に起こりやすく、見るのは体重ではなく電解質です。

この3問も、実際に収録している問題です

NCLEX BANKには消化器・栄養の問題が成人看護に156問、小児を含めると221問、全体で2,700問超を収録しています。この記事の解説は、実際の問題についている日本語解説をそのまま短くしたものです。英語の医療用語には、すべて日本語訳がついています。月額 $99、いつでも解約できます。

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