NCLEXの隔離予防策は「何に乗って移るか」で3つに分ける
感染予防策は、NCLEXで病気を知らなくても解ける数少ない領域です。問われているのは病態生理ではなく、「その病原体は、どうやって隣の人まで届くか」——それだけ。乗り物が3つしかないので、箱も3つで足ります。この記事では、その3つに振り分ける線を引いてから、実際にNCLEX BANKに収録している問題を3問解きます。英語の用語にはすべて日本語をつけます。
1. 病名ではなく、乗り物で分ける
予防策を疾患ごとに暗記すると、数十個あって混ざります。でも決めているのは病名ではなく、病原体がどうやって空間を移動するかの1点だけです。
粒が小さく、部屋中に広がって長く残る。→ N95と陰圧個室。
飛沫(Droplet)=重いので、1〜2mで落ちる。
咳やくしゃみで飛ぶが、床に落ちてそれ以上進まない。→ サージカルマスクと個室。
接触(Contact)=自分では動かない。手と物が運ぶ。
触れたものを介して移る。→ ガウンと手袋。
選択肢を読むときにやるのは、病名を「漂う」「落ちる」「運ばれる」のどの箱に入れるかだけです。
| 経路 | 代表的な疾患 | 防護具と部屋 |
|---|---|---|
| 空気=漂う 部屋の空気ごと閉じ込める |
tuberculosis(結核) measles(麻疹) varicella(水痘) |
N95 respirator(N95マスク) negative pressure room(陰圧室・AIIR)/ドアは閉める |
| 飛沫=落ちる 近づくときだけ防ぐ |
influenza(インフルエンザ) pertussis(百日咳) mumps(ムンプス) meningococcal meningitis(髄膜炎菌性髄膜炎) |
surgical mask(サージカルマスク) 個室/同じ疾患ならまとめてよい |
| 接触=運ばれる 手と物を止める |
MRSA / VRE C. difficile RSV(RSウイルス) scabies(疥癬) |
gown and gloves(ガウンと手袋) 個室が望ましい/器具は専用にする |
例外は2つ。①帯状疱疹は、限局していれば接触だけですが、播種性(全身に散らばった状態)や免疫不全患者では空気+接触に上がります。②髄膜炎菌は重症ですが飛沫で、有効な抗菌薬の開始から24時間で解除できます。重症度は予防策の種類を決めません。
もう一つ、前提として押さえておくことがあります。この3つの箱は、標準予防策の上に乗っているということです。
空気・飛沫・接触の3つは、transmission-based precautions(感染経路別予防策)と呼ばれ、土台を外して置き換えるものではなく、上に足すものです。「接触予防策だから手指衛生はしなくていい」という選択肢は、この一点だけで消せます。
2. 例題① 6つを3つの箱に投げ分ける
最初は、まさにその仕分けだけを問う問題です。
The charge nurse reviews the admissions for the shift. Which clients require airborne precautions? Select all that apply.
その勤務帯の入院患者を確認している主任看護師。空気予防策が必要なのはどの患者か。あてはまるものをすべて選べ。
- 24-year-old with a cough, night sweats, and suspected pulmonary tuberculosis咳嗽と寝汗があり、肺結核が疑われる24歳
- 6-month-old with respiratory syncytial virus bronchiolitisRSウイルスによる細気管支炎の生後6か月児
- 30-year-old with fever, coryza, and a rash diagnosed as measles発熱・鼻汁・発疹があり、麻疹と診断された30歳
- 55-year-old receiving chemotherapy who has disseminated herpes zoster化学療法中で、播種性帯状疱疹を発症した55歳
- 70-year-old with bacterial meningitis caused by Neisseria meningitidis髄膜炎菌による細菌性髄膜炎の70歳
- 45-year-old with parotid swelling diagnosed as mumps耳下腺の腫脹があり、流行性耳下腺炎(ムンプス)と診断された45歳
正解:1・3・4
6つの病名を思い出す必要はありません。3つの箱に投げ分けて、空気の箱を丸ごと出すだけです。
1の tuberculosis(結核)と3の measles(麻疹)は、覚えるべき3つのうちの2つ。4の disseminated herpes zoster(播種性帯状疱疹)は水痘と同じウイルスで、全身に散らばった時点で水痘と同じ扱いになります。
消すべきは2・5・6。2の RSV(RSウイルス)は接触、5の Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)と6の mumps(ムンプス)は飛沫です。
ここがポイント:髄膜炎菌は「重症そうだから空気だろう」と引っぱられる選択肢です。重症度と予防策の種類は関係ありません。決めるのは病原体の乗り物だけ。
出典:NCLEX BANK / 基礎看護 🧤 Safety Infection Control #3 Q20
3. 例題② 接触予防策の中の、たった1つの例外
次は、覚える価値のある例外です。アルコールが効かない菌が1つだけあります。
A client is admitted with profuse watery diarrhea, and a stool specimen is positive for Clostridioides difficile toxin. Which infection control precaution should the nurse implement?
大量の水様性下痢で入院した患者。便検体が Clostridioides difficile 毒素陽性であった。看護師が実施すべき感染対策はどれか。
- Disinfect the blood pressure cuff and thermometer with an alcohol-based wipe after each use.使用のたびに、血圧計のカフと体温計をアルコール綿で消毒する
- If the hands are visibly soiled after glove removal, wash them with soap and water for at least 20 seconds.手袋を外したあと手に目に見える汚れがあれば、石けんと流水で20秒以上洗う
- Wear an N95 respirator when providing care within 3 feet of the client.患者の90cm以内でケアするときはN95マスクを着ける
- Place a surgical mask on the client when transporting the client for radiographs.X線撮影へ搬送するとき、患者にサージカルマスクを着ける
正解:2
C. difficile は接触予防策の病原体です。ただし接触予防策の中に1つだけ例外があり、それがこの問題の全部です。
この菌は spore(芽胞)という殻をつくります。アルコールは芽胞を殺せません。だから手指消毒では落ちず、石けんと流水で物理的に洗い流すしかない。1がアルコール綿で不正解なのも同じ理由で、器具は次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤系)で拭きます。
3のN95は空気予防策の装備、4の患者へのマスクは飛沫予防策の搬送手順です。どちらも箱が違うので、読んだ瞬間に消せます。
補足:2は「目に見えて汚れていたら」という条件つきの書き方ですが、C. difficile では汚れの有無にかかわらず石けんと流水が原則です。4つの中で正しいのはこれだけ、という選び方をしてください。
出典:NCLEX BANK / 基礎看護 🧤 Safety Infection Control #5 Q4
4. 例題③ 危ないのは、着るときではなく脱ぐとき
最後はPPEの手技です。連載第3回で扱った「介入すべきなのはどれか」=間違いを1つ探す形が、そのまま出ます。
The charge nurse observes a new graduate nurse preparing to leave the room of a client who requires airborne and contact precautions. The charge nurse should intervene if the new graduate nurse is observed
空気予防策と接触予防策が必要な患者の部屋から出ようとしている新卒看護師。主任看護師が介入すべきなのはどの行動か。
- removing the gloves by grasping the outside of one cuff with the other gloved hand片方の手袋の外側の袖口を、手袋をしたもう一方の手でつまんで外している
- grasping the contaminated front of the face shield with a gloved hand to remove itフェイスシールドの汚染した前面を、手袋をした手でつかんで外している
- rolling the gown away from the body with the contaminated side inward before discarding itガウンを、汚染面が内側になるように体から丸めて外し、廃棄している
- stepping out of the room and closing the door before removing the N95 respirator部屋を出てドアを閉めてから、N95マスクを外している
正解:2
「介入すべきなのはどれか」=間違っている1つを探す問題です。3つは正しい手技なので、そこで迷わないこと。
2が誤り。PPEで最も汚染しているのは前面と外側です。フェイスシールドやゴーグルは、汚染していない後ろのバンドや耳の部分を持って、顔から離す方向に外します。前面をつかんだ時点で、手袋も、その手が次に触るものも汚染します。
1は正しい——手袋の外側を、手袋をした手で扱っています。素手が外側に触れていません。3も正しく、ガウンは汚染面を内側に丸めるのが原則。
4も正しい、というよりここが唯一の例外です。ほかのPPEは部屋の中で脱ぎますが、N95 respirator(N95マスク)だけは部屋を出て、ドアを閉めてから外します。まだ空気中に病原体が漂っている部屋で顔を外すことになるからです。
ここがポイント:着る順番より、脱ぐ順番のほうが問われます。着るときはまだ何も汚れていませんが、脱ぐときは全部が汚染しているからです。
出典:NCLEX BANK / 基礎看護 🧤 Safety Infection Control #4 Q8
まとめ
感染対策でやることは、3つだけです。
- 乗り物で振り分ける — 漂うなら空気、1〜2mで落ちるなら飛沫、手と物が運ぶなら接触
- 例外を2つだけ覚える — C. difficile にアルコールは効かない(石けんと流水)。帯状疱疹は播種すると空気に上がる
- 脱ぐときを疑う — 前面と外側が汚染。N95だけは部屋を出てから外す
覚える英単語は10語ほどで、precaution・airborne・droplet・contact の4語は、成人・小児・母性のどの領域の問題にも同じ意味で出てきます。1回覚えれば、試験中ずっと効き続ける単語です。
よくある質問
NCLEXで空気予防策が必要な疾患は何ですか?
結核(tuberculosis)、麻疹(measles)、水痘(varicella)の3つです。加えて、播種性の帯状疱疹や免疫不全患者の帯状疱疹も、水痘と同じウイルスのため空気予防策と接触予防策の両方が必要になります。この3つ以外を空気予防策に入れる選択肢は、ほぼ引っかけです。とくに髄膜炎菌性髄膜炎は重症であっても飛沫予防策で、有効な抗菌薬の開始から24時間で解除できます。重症度は予防策の種類を決めません。
C. difficileの患者にアルコール手指消毒は使えますか?
使えません。Clostridioides difficileは芽胞(spore)をつくり、アルコールでは死なないためです。手袋を外したあとは石けんと流水で洗い流してください。環境や器具の清拭も、アルコールではなく次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤系)の製品を使います。予防策の種類そのものは接触予防策で、ガウンと手袋を着用します。「接触予防策の中でアルコールが効かない例外」として1つだけ覚えておけば足ります。
陰圧個室が1つしかないとき、どの患者を優先しますか?
空気予防策が必要な患者を優先します。飛沫予防策や接触予防策の患者は、個室やカーテンによる距離の確保、ガウンと手袋で対応できますが、空気予防策だけは陰圧室という設備がなければ代替できないからです。たとえば、C. difficileの患者、ムンプスの患者、RSウイルスの乳児、数週間の咳嗽と血痰・寝汗・体重減少がある患者の4人であれば、結核が疑われる最後の患者を陰圧室に入れます。
この3問も、実際に収録している問題です
NCLEX BANKには隔離・予防策を直接問う問題が44問、感染対策の章に86問、感染症全体で134問、全体で2,700問超を収録しています。この記事の解説は、実際の問題についている日本語解説をそのまま短くしたものです。英語の医療用語には、すべて日本語訳がついています。月額 $99、いつでも解約できます。
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