看護師のワーホリ、ビザで看護師にはなれない。決めるのはその国の看護師登録です
「看護師のままワーホリに行けるか」「向こうで看護師として働けるか」「何歳まで、いくらかかるか」。答えから書くと、ワーキングホリデーのビザで看護師になれる国はありません。ビザが許すのは「働くこと」までで、「看護師」という仕事を許すのは、どの国でもその国の看護師登録です。ただ、登録までの道のりの長さは国によってまるで違います。期間が2年あり、登録の手続きを日本から始められるイギリスから、ドイツ語B2が前提のドイツまで。この記事では、日本国籍の人が使える7か国(オーストラリア・ニュージーランド・カナダ・イギリス・アイルランド・ドイツ・韓国)の年齢・期間・費用と、看護師として働くまでの距離、登録なしで就ける医療の仕事、医療の仕事をするときの健康診断を、各国政府と看護登録機関の原文で並べます。
1. ビザで決まるのは「働けること」まで
ワーホリのビザは、決まった期間その国に住み、そのあいだ働いてよい、という許可です。どの仕事に就けるかの線引きは、ビザではなく職業ごとの法律が決めています。看護師はどの国でも、登録した人しか名乗れない・就けない職業です。
- オーストラリア:看護師の登録機関Ahpraは、登録が済むまではその職業として働けないと明記し、ビザと登録は「別の手続きで、Ahpraはビザを手伝えない」としています
- イギリス:看護・助産令44条は、登録していないのに登録者だと偽ったり、守られた職名を名乗ったりすることを犯罪としています
- アイルランド:登録機関NMBIは「アイルランドで働く看護師・助産師はNMBIに登録していなければならない」と書いています
- カナダ(BC州):登録機関BCCNMは「オンラインの名簿に載るまでは、看護師として働く権限はない」としています
- 韓国:医療法27条が、免許のない人の医療行為と「간호사(看護師)」の名称を禁じています
ですから「看護師のワーホリ」には2つの道があります。行く前か行った先で、その国の看護師登録を取って看護師として働くか、登録の要らない医療・介護の仕事に就くか。どちらが現実的かは、国によって違います。
2. 7か国の年齢・期間・費用(日本国籍の場合)
年齢はどの国も「申請する時点で」の条件です。オーストラリアは、31歳の誕生日の前日の真夜中までに申請するよう書いています。
- オーストラリア(subclass 417):18〜30歳・12か月・申請料AUD 840(約9万2,300円)・人数の上限なし・資金の目安は「ふつうAUD 5,000程度」(約55万円)・審査は約3か月。2025/26年度に日本国籍の人へ出た1回目のビザは10,635件
- ニュージーランド:18〜30歳・12か月・NZD 770から(約6万8,200円)・資金NZD 4,200(約37万2,000円)・80%が2週間以内に審査。一度だけ
- カナダ(IEC):18〜30歳・1回12か月まで・2025年4月1日以降は2回まで・費用CAD 369.75(参加費184.75+就労許可100+生体情報85、約4万1,100円)・資金CAD 2,500(約27万8,000円)。2026年の枠は6,433人で、応募者の中から招待を出す形。2026年の最後の招待は10月19日の週で、それまでに登録を済ませる必要がある
- イギリス(Youth Mobility Scheme):18〜30歳・最長24か月・2026年の枠は6,000人で抽選なし・申請料£340(約7万1,100円)+医療の追加料金£1,552(2年分、約32万4,500円)・資金£2,530を28日間(約52万9,000円)。一度だけ。決定はふつう3週間以内。2025年に日本国籍の人へ出たビザは2,018件
- アイルランド:18〜30歳・1年・申請料17,300円・資金50万円以上・健康であること。一度だけ。2026年の受付は1月15日〜2月6日と7月15日〜31日の2回
- ドイツ:18〜30歳・1年(延長なし)・ビザは無料・資金€2,000(帰りの航空券がなければ€4,000、約35万4,000円/約70万7,000円)。同じ雇い主のもとで働けるのは通算1年まで
- 韓国:原則18〜25歳(やむを得ない事情があれば30歳まで)・年1万人・資金は東京の総領事館で30万円。東京では2025年10月1日から一度だけ再参加でき、働けるのは週25時間まで。健康診断書が要る
期間が2年あるのはイギリスだけです。看護師の登録はどの国でも数か月単位の手続きなので、ビザの期間の長さが、そのまま看護師として働ける時間の長さに効いてきます。
3. 看護師として働くまでの距離
ここからが本題です。ワーホリのあいだに看護師として働くには、その国の登録が要ります。登録の中身は国ごとの記事に詳しく書いたので、ここではワーホリの期間と比べてどれだけ遠いかに絞ります。
イギリス:期間2年、手続きを日本から始められる
看護師の登録機関NMCは、学士も臨床経験も条件にしていません(イギリスの記事)。筆記のCBTは新宿と大阪で受けられ、実技のOSCEはイギリスで受けます。NMCが示す目安は、資格の審査が書類がそろってから14日以内、登録の申請が30日以内。費用は審査・CBT・OSCE・登録を合わせて£1,226(約25万6,300円)です。英語の点数と資格の審査、CBTを日本で済ませておけば、ビザの2年のうちかなりの期間を看護師として働ける計算です。7か国のなかで、ワーホリの期間と登録の手間がいちばん噛み合う国です。
オーストラリア:登録を先に済ませる国
日本で看護教育を受けた人の多くは、登録の前に成果にもとづく審査(OBA)を受けます。筆記がNCLEX-RN、実技がオーストラリアでのOSCEです(オーストラリアの記事)。ビザは12か月で、2年目のビザに必要な「指定の仕事」に看護は入りません。そのかわり、医療の仕事には同じ雇い主で6か月までという制限がかかりません。2024年1月1日からの措置で、内務省は「病院で行われるすべての仕事」と書き、例にnursesを挙げています(政府が次の決定をするまで)。NCLEXを日本で受けておき、OSCEと登録を渡航の前後に合わせれば、ビザの期間のうちに看護師として働く道はあります。
オーストラリアの登録も、カナダのオンタリオ州・BC州の登録も、
筆記はNCLEX-RNです
どんな問題が出るのか、NCLEX BANKの無料10問で先に見ておけます。問題文は本番どおり英語のまま。解説は日本語で書き、医療用語だけ英語で残しています。
カナダ:登録の条件にNCLEX、期間は12か月
オンタリオ州の登録機関CNOの条件には、教育・直近3年以内の実務・NCLEX-RN・実務への移行・法規の試験・英語・在留資格が並び、申請料はCAD 433(2026年)です。CNOは、就労許可が「医療の職業」での就労を許していなければ、オンタリオで看護はできないと書いています。BC州では、国外の看護師は評価機関とBCCNMに同時に申請し、追加の授業を求められることが多く、そのあとでNCLEX-RNを受けます。日本国籍のワーホリは1回12か月なので、登録を待つあいだにビザの期間の多くが過ぎると考えておくほうが安全です(カナダの記事)。
ニュージーランド:免許取得後1,800時間の経験が条件
看護評議会NCNZは、母国の有効な登録、英語、看護師登録後の臨床経験1,800時間、オンライン講座を条件にし、書類はまずTruMeritで確かめます。イギリス・アイルランド・アメリカ・シンガポール・BC州・オンタリオ州で教育を受けたか登録した人でなければ、理論試験とOSCEの能力評価がつく見込みです。申請料はNZD 485(約4万3,000円)。移民局は、このビザでは恒久的な職には就けないとしています(ニュージーランドの記事)。
アイルランド:2段階の登録
NMBIの登録は、資格の認定と登録の2段階です。費用は認定€350・登録€145・年会費€100。NMBIは、結果が出る前に仕事を辞めたりアイルランドへ移ったりしないよう勧めています。ワーホリは1年です。
ドイツ・韓国:ワーホリの期間では届かない
ドイツで看護師(Pflegefachfrau/-mann)を名乗るには許可が要り、条件に必要なドイツ語の力が入っています。州の案内ではふつうB2で、資格が同等と認められなければ知識試験か最長3年の適応研修です(ドイツの記事)。韓国では、外国で看護教育を受けて免許を持つ人も、韓国の看護師国家試験に合格しなければ看護師になれません(看護法4条)。受験には学校が基準を満たしていると認められていることが要り、韓国保健医療人国家試験院の一覧(2026年8月31日時点)には日本の学校が71校載っています。看護助手(간호조무사)も資格の職業です。
4. 登録なしで就ける医療・介護の仕事と、その条件
登録を待つあいだや、登録を取らずに医療の現場を経験したい人が就くのが、看護師の指示のもとで働く補助職です。ただし「誰でもすぐ就ける」わけではありません。各国の公的な説明はこうです。
- オーストラリア:AIN(アシスタントナース)。AINについて西オーストラリア州保健省は、方針文書で「規制されていない」職種と位置づけ、看護師の指示と監督の下で働く職と定めています。ただし同じ州の公立病院では、学生でないAINにCertificate III(医療補助や個別支援の職業資格)を求めています。国外の看護師が「AIN(学生)」として働けるのは、NMBAが認めた課程に在籍し、学士・現に有効な国外の登録・3年の経験がある場合に限られます
- ニュージーランド:ケア職(kaiāwhina)。ニュージーランド保健庁(Te Whatu Ora)は、登録した医療職ではない人たちの仕事で「登録は要らない」と説明しています
- イギリス:ヘルスケアアシスタント。NHSの職業案内は「決まった入職の条件はない」とし、給与はふつうBand 2です
- アイルランド:ヘルスケアアシスタント。保健サービス庁の在宅支援の募集は、職業資格QQIレベル5の医療の資格か、同等と認められる資格、または同じ種類の仕事に今就いていることを求めています
- カナダ(BC州):ケアエイド。公的な資金を受ける医療機関で働くケアエイドは、登録簿への登録が義務です。カナダの免許のない看護師は「国外で教育を受けた医療職」として申請します。申請は無料で、審査は5〜10営業日
5. 医療の仕事をするなら、健康診断を先に
ふつうのワーホリでは健康診断の要らない国でも、医療の仕事に就くつもりなら話が変わります。
- オーストラリア:日本は結核の少ない国の一覧に入っていますが、看護師として働く予定の15歳以上の人には、診察と胸部X線に加えて、腎機能、HIV、B型・C型肝炎の検査が求められます
- カナダ:移民省は、医療・教育・保育・高齢者介護の分野で働く予定なら、申請前に健康診断を受けるよう求めています。受けずにいると、就労許可に「健康診断の必要な職には就けない」という条件が付きます。看護師として働くには、それが外れていることが前提です
- イギリス:6か月以上滞在する人の結核検査は、指定の国に住む人だけが対象で、日本は入っていません
- ニュージーランド:日本は結核の少ない国に入っているので、ワーホリで胸部X線は要りません
- 韓国:東京と福岡の総領事館の案内は、申請に健康診断書を求めています
6. 目的で選ぶ
海外で看護師として働きたい
期間が2年あり、筆記を日本で受けられるイギリスがいちばん現実的です。オーストラリアはNCLEXとOSCEを先に済ませる計画なら視野に入ります。どの国も、登録の結果が出てから仕事を辞める・渡航するのが、登録機関自身のすすめです英語で医療の現場を経験したい
補助職(AIN・ヘルスケアアシスタント・ケアエイド)が入口です。オーストラリアは医療の仕事に6か月の制限がかからない一方、州や雇い主によっては職業資格を求めます年齢が30歳に近い
日本国籍の上限は7か国とも申請時の30歳(韓国は原則25歳)。カナダは2026年の最後の招待が10月19日の週、アイルランドの2026年の受付(1月と7月)はもう終わっています
まとめ
- ワーホリのビザで決まるのは働けることまで。看護師として働くには、どの国もその国の登録が要る
- 日本国籍は7か国とも申請時30歳まで(韓国は原則25歳)。期間は1年、イギリスだけ2年
- イギリスはNMCの審査14日・登録30日が目安、CBTは新宿と大阪、費用は合計£1,226
- オーストラリアとカナダ(オンタリオ・BC)の登録の筆記はNCLEX-RN。オーストラリアは医療の仕事に6か月の制限がかからない
- NZは看護師になってからの臨床1,800時間、アイルランドは2段階の登録、ドイツはドイツ語B2、韓国は国家試験
- 補助職は登録不要の国が多いが、職業資格や登録簿(BC州)を求める場合がある
- 医療の仕事をするなら、オーストラリアとカナダでは健康診断が先
国ごとの登録の手順と費用は、イギリス・オーストラリア・カナダ・ニュージーランド・ドイツの記事に、オーストラリアの給料とアシスタントナースの時給はオーストラリアの看護師の給料の記事にまとめています。
よくある質問
看護師はワーホリで看護師として働けますか?
ビザだけでは働けません。ワーキングホリデーのビザは働くことを許しますが、看護師として働けるのは、どの国でもその国の看護師登録を持つ人だけです。オーストラリアの登録機関Ahpraも、登録が済むまではその職業として働けないと明記しています。登録を取れば、ワーホリのビザで看護師として働くこと自体は妨げられません。期間が2年あり、筆記のCBTを新宿と大阪で受けられるイギリスが、ワーホリの期間と登録の手間がいちばん噛み合う国です。
看護師のワーホリは何歳まで行けますか?
日本国籍の人は、オーストラリア・ニュージーランド・カナダ・イギリス・アイルランド・ドイツのいずれも、申請する時点で18〜30歳です(2026年10月時点)。韓国は原則18〜25歳で、やむを得ない事情があれば30歳までです。カナダは2026年の最後の招待が10月19日の週で、それまでにプロフィールを登録する必要があります。
看護師のワーホリにかかる費用はいくらですか?
ビザの費用は、オーストラリアAUD 840(約9万2,300円)、ニュージーランドNZD 770から(約6万8,200円)、カナダCAD 369.75(約4万1,100円)、イギリス£340と医療の追加料金£1,552(2年分、合わせて約39万5,600円)、アイルランド17,300円、ドイツ無料です(2026年10月15日の為替)。このほか資金の証明(オーストラリアAUD 5,000程度、イギリス£2,530など)が要ります。看護師として働くなら登録の費用が別にかかり、イギリスはNMCの審査・試験・登録の合計で£1,226(約25万6,300円)です。
ニュージーランド:移民局 Japan Working Holiday Visa/ワーホリの医療の条件と結核の少ない国/看護評議会NCNZ(国外の看護師の登録・費用)/Te Whatu Ora(kaiāwhina)
カナダ:移民省 International Experience Canada(国別の条件・2026年の枠と招待・費用・就労許可の申請と健康診断)/オンタリオ州CNO(国外の看護師・就労許可・評価機関・手数料)/BC州BCCNM(国外の看護師)/BC Care Aide & Community Health Worker Registry
イギリス:GOV.UK Youth Mobility Scheme visa(2026年9月16日更新)・移民規則 Appendix Youth Mobility Scheme/結核検査の対象国/医療の追加料金/NMC(審査14日・登録30日・費用)/Nursing and Midwifery Order 2001 art. 44/NHS Health Careers(Healthcare assistant)/内務省の発給統計
アイルランド:在日アイルランド大使館(ワーホリの案内)/NMBI(登録・費用)/HSE(在宅支援のヘルスケアアシスタント)
ドイツ:在日ドイツ大使館(ワーホリの案内・2025年2月)/看護職法(PflBG)1・2・4・40条/ブレーメン州の承認の案内
韓国:韓国ワーキングホリデー情報センターと在日韓国総領事館の案内(2026年9月15日)/看護法4条・6条/医療法27条/韓国保健医療人国家試験院の認定校一覧(2026年8月31日)
円:三菱UFJ銀行の2026年10月15日の仲値(TTM):1オーストラリアドル=109.87円、1ニュージーランドドル=88.57円、1カナダドル=111.21円、1ポンド=209.08円、1ユーロ=176.87円
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