領域別 ・ 神経

NCLEXの神経は、圧か血流かで正解が反対になる

神経の問題が解きにくいのは、覚えることが多いからではありません。同じ所見に、正反対の正解がつくからです。収縮期 202 mmHg を見て「下げる」と答えると外れる問題があり、同じ数字で「下げる」が正解になる問題もあります。分かれ目は1つ——いま読まされているのが圧の話なのか、血流の話なのか。この記事ではその見分け方を1本決めてから、実際にNCLEX BANKに収録している問題を3問解きます。英語の用語にはすべて日本語をつけます。

この記事の使い方 連載第4回で作った「何を先にするか」という物差しを、神経に当てる回です。ただし神経だけは、物差しを当てる前にもう一段あります。どちらの話かを決めるまで、優先順位そのものが決まりません。

1. 頭蓋骨は、開かない箱

ほかの臓器には逃げ場があります。腸は張り、肺は膨らみ、皮膚は伸びる。脳にはそれがありません。骨の箱に入っていて、箱の大きさは変わらないからです。

中身は3つだけです。脳・血液・髄液。合計の体積は一定なので、どれかが増えれば、ほかが押し出されます。まず髄液が逃げ、次に静脈の血が逃げ、逃がすものが尽きたところで圧が上がりはじめます。腫瘍が大きくなっても、脳が腫れても、出血が広がっても、たどる道はこの1本です。

この記事の結論 神経の問題は、次のどちらかを聞いています。

① 圧の話(increased ICP
箱の中身が増えている。だから圧を上げることを、しない。頭を上げる、首をまっすぐ保つ、いきませない、ケアをまとめない。

② 血流の話(perfusion
脳に血が届いていない。だから届けている圧を、下げない。高い血圧が、いま脳を生かしている側にいます。

そして、どちらかを決めるのは画像です。症状では決まりません。ここを飛ばした選択肢が、いちばんよくできた誤答になります。

脳に血が届く量は、はっきり式になっています。CPP(脳灌流圧)MAP(平均動脈圧)ICP(頭蓋内圧)。圧が上がると、届く血が減る。血圧が下がっても、届く血が減る。この式の左辺を守ることが、神経の看護のほぼ全部です。

圧の話(ICPが上がっている)血流の話(血が届いていない)
いる場面 脳腫瘍、頭部外傷、脳浮腫、頭蓋内出血 虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作
体位 頭部30度挙上・頸部は正中
首を曲げる・ひねると静脈の戻りが止まる
指示に従う。水平を保つ指示も出る
重力で血を届ける狙い
高い血圧 血圧そのものより、徐脈と呼吸の乱れが揃っていないかを見る 下げない(血栓溶解を行うときだけ例外)
してはいけないこと いきみ、強い咳、長い吸引、股関節の屈曲、ケアをまとめて行う 降圧を急ぐこと、絶飲食の確認前に飲ませること

2. 例題① 吐いたのに、吐き気がない

1問目は圧の話です。数字は1つも出てきません。出てくるのは、患者が言った一言だけです。

例題 1 ・ 四択
問題文

A client with a brain tumor under the nurse's care suddenly vomits forcefully but denies any nausea. Which action would be a priority for the nurse?

脳腫瘍の患者を担当している。患者が突然、勢いよく嘔吐したが、吐き気はないと言う。看護師が優先すべき行動はどれか。

選択肢
  1. Lay the client flat to rest患者を水平に寝かせて休ませる
  2. Notify the health care provider医師に報告する
  3. Record the amount of emesis嘔吐量を記録する
  4. Administer a prescribed antiemetic処方されている制吐薬を投与する

正解:2
吐き気のない嘔吐は、消化管の話ではありません。吐き気は胃が送る合図です。その合図がないまま勢いよく吐いたなら、動いているのは胃ではなくmedulla(延髄)の嘔吐中枢——圧が上がって、そこが直接押されているということです。脳腫瘍という、箱の中身が増える理由をすでに持っている患者で起きています。

だから報告が先です。この所見だけで、看護師の手元にある処置では追いつかない段階に入っています。

1はいちばん危ない選択肢です。水平に寝かせると頭からの静脈の戻りが悪くなり、圧をさらに上げます。休ませるという発想そのものが、ここでは逆に働きます。3の記録は、量を書き留めているあいだ何も起きません。4の制吐薬は、合図だけを消して原因を残します——吐かなくなった患者を見て、圧が下がったと読み違える危険まで足すことになります。

ここがポイント:3と4は、嘔吐した患者に対しては正しい看護です。正しくないのは、この嘔吐に対して。神経の問題は、行為の良し悪しではなくそれが何の合図かの読み違えを突いてきます。

出典:NCLEX BANK / 成人看護 🧠 Neurologic #1 Q19

早い徴候と、遅い徴候 早い——level of consciousness(意識レベル)の変化。そわそわする、いつもより眠そう、話のつじつまが少し合わない。いちばん先に出るのがここで、しかも数値になりません。だからNCLEXは「落ち着かなくなった」を、正解を指す所見として置いてきます。

遅い——Cushing triad(クッシング三徴)血圧上昇(脈圧が開く)・徐脈・呼吸の不規則。3つ揃ったら、もう遅いという合図です。ほかに、片側の瞳孔が開いて対光反射が消える、posturing(異常肢位)、そして吐き気のない嘔吐。

「血圧が高くて脈が遅い」を、循環の問題として読まないこと。神経の患者でこの組み合わせが出たら、心臓ではなく頭を疑います。

3. 例題② 202/108 を、下げない

2問目は血流の話です。ここが、日本の病棟の感覚といちばん強くぶつかります。

例題 2 ・ 四択
問題文

An acute ischemic stroke client who is not a candidate for thrombolytic therapy is under the nurse's care. The client's blood pressure (BP) is 202/108 mm Hg, and there is a new PRN prescription for IV labetalol when systolic BP is 220 mm Hg or higher. Which action should the nurse take?

急性期の虚血性脳卒中で、血栓溶解療法の適応がない患者を担当している。血圧は 202/108 mmHg。収縮期血圧が 220 mmHg 以上のときにlabetalolを静注する、という頓用指示が新たに出ている。看護師がとるべき行動はどれか。

選択肢
  1. Notify the health care provider about the client's BP immediately.血圧についてただちに医師に報告する
  2. Question the parameters of the IV labetalol prescription.ラベタロールの指示にある基準値に疑義を出す
  3. Continue to monitor the client's BP.血圧の観察を続ける
  4. Administer IV labetalol now.いますぐラベタロールを静注する

正解:3
詰まった血管の先には、まだ死んでいない脳があります(penumbra(ペナンブラ・虚血辺縁部))。そこへ血が届くかどうかは、いま身体が上げている血圧で決まっています。202/108 は病気ではなく、脳が血を押し込もうとしている代償です。ここで下げると、助かるはずだった辺縁部まで梗塞になります。

血栓溶解療法を行わない虚血性脳卒中では、220/120 mmHg までは下げないのが基準です。指示にある 220 という数字は、そのとおりに書かれています。だから2の「疑義を出す」も誤りで、指示は正しい

1の報告も、いま報告すべき異常がありません。基準の範囲内にある血圧を報告するのは、観察をやめて判断を渡してしまうことになります。4は、いちばんしてはいけないことをいますぐする選択肢です。

ここがポイント:この問題は指示を読ませる問題です。血圧の数字だけを見て動くと、220 という条件を読み飛ばします。頓用指示は条件のほうが本体だと考えてください。

出典:NCLEX BANK / 成人看護 🧠 Neurologic #2 Q5

日本語の感覚と、いちばんずれるところ 病棟で収縮期 200 を見たら、まず下げるほうへ手が動きます。そう習いましたし、たいていの場面でそれが正しい。

虚血性脳卒中では逆です。その血圧は、詰まった先へ血を送るために身体が自分で上げたものです。下げるということは、まだ生きている脳への供給を細くすることを意味します。

ここも、精神の回と同じ構図です——知識ではなく、身についた反射のほうが邪魔をする。神経の問題で血圧の数字に手が伸びたら、いったん止めて「これは圧の話か、血流の話か」に戻ってください。

血圧をどうするかは、場面ごとに決まっています。4つとも覚える必要はありません。左の列を見分けられれば、右は付いてきます。

場面血圧の扱い
虚血性・血栓溶解を行わない 220/120 mmHg までは下げない。観察を続ける
虚血性・血栓溶解を行う 投与前に185/110 mmHg 未満へ。投与後24時間は180/105 mmHg 未満を保つ
血管を溶かして開ける以上、高い圧のままだと出血に変わる
出血性 下げる。出ている血を、圧で押し出し続けないため
ICPが上がっている 血圧は治療の対象ではなく合図。徐脈・呼吸の乱れと揃っていないかを見て報告する

1行目と3行目が正反対だということに、注意してください。どちらも「脳卒中」で、症状の見た目も同じです。それでも片方は下げず、片方は下げる。だから3問目が要ります。

4. 例題③ 治療より先に、CT

3問目は順番です。ここまでの2つを分ける手続きが、そのまま問題になっています。

例題 3 ・ SATA(すべて選べ)
問題文

A client with suspected ischemic stroke has just arrived at the emergency department with slurred speech, facial drooping, and right arm weakness that began 1 hour ago. While planning care, which of the following interventions should the nurse anticipate including in the initial plan of care? Select all that apply.

虚血性脳卒中が疑われる患者が、1時間前に始まった呂律の回らなさ・顔面下垂・右上肢の脱力で、たったいま救急外来に到着した。初期の看護計画に含めると予測されるものはどれか。あてはまるものをすべて選べ。

選択肢
  1. Obtain a STAT noncontrast CT scan of the head頭部単純CT(造影なし)を至急で撮る
  2. Perform a baseline neurologic assessment神経学的所見のベースラインを評価する
  3. Prepare to give IV alteplase if there are no contraindications禁忌がなければ、alteplaseの静注に備える
  4. Arrange an outpatient speech therapy referral外来の言語療法への紹介を手配する
  5. Begin teaching about long-term stroke risk-factor changes長期的な脳卒中リスク因子の改善について指導を始める

正解:1・2・3
症状からは出血と梗塞を区別できません。顔が下がる・片側が動かない・言葉が出ないは、どちらでも同じように起こります。そして治療は正反対です——片方は溶かし、もう片方は止める。出血の患者にalteplase(アルテプラーゼ・血栓溶解薬)を入れれば、その一投で殺しかねません。だから1の単純CTが最初です。造影しないのは、出血は造影剤なしで白く写るうえ、造影を挟めば、その分だけ使える時間が減るからです。

2のベースラインは、あとで比べるための一点です。神経の悪化は「悪くなった」ではなく「さっきと違う」で見つかるので、最初に取っていなければ、その後の観察が全部読めなくなります。

3は準備です。発症から4.5時間という窓があり、この患者は1時間前。CTの結果が出た瞬間に投与できる状態にしておくのが、この時間帯の看護です。投与そのものではなく、備えることが計画に入ります。

4と5はどちらも正しい看護です。脳卒中の患者は言語療法を受けますし、再発予防の教育も必ず行います。誤りなのは、いま計画に入れているところだけ。急性期に外来の紹介を手配し、禁煙の話を始めている看護師は、目の前の4.5時間を使い切っています。

ここがポイント:連載第4回精神の回で出てきたのと、同じ形です。良い介入が、順番のせいで誤答になる。神経ではそこに時間の窓が乗るので、外れ方がいっそう明確になります。

出典:NCLEX BANK / 成人看護 🧠 Neurologic #6 Q13

発症時刻は「最後に正常だった時刻」 4.5時間を数えはじめるのは、症状に気づいた時刻ではありません。last known well(最後に正常だと分かっていた時刻)です。

だから朝、起きたら症状があった患者は、原則として窓の外になります。眠る前が最後に正常だった時刻なので、そこから数えるしかないからです。「いつ気づいたか」ではなく「いつまで普通だったか」を聞く——この一手を選ばせる問題が、まとまった数あります。

家族への確認、最後に会話した時刻、内服の時刻。時刻を確定させることが、神経の急性期では看護そのものです。

まとめ

神経でやることは、3つだけです。

  1. どちらの話かを先に決める — 圧が上がっているのか、血が届いていないのか。決めるのは症状ではなく画像で、それまで治療は始まらない
  2. 圧の側では、日常の看護が禁忌になる — 頭は30度・首は正中、いきませない、吸引は短く、ケアはまとめない。水平に寝かせて休ませるのは、いちばん危ない親切
  3. 血流の側では、高い血圧を下げない — 220/120 までは待つ。下げるのは、血栓溶解を行うときと、出血のときだけ

徴候の読み方も1本です。いちばん早いのは意識レベルの変化で、数値になりません。クッシング三徴が揃っていたら、もう遅い。神経の問題で「落ち着かない」「いつもより眠そう」と書いてあったら、それは背景描写ではなく所見です。

よくある質問

NCLEXの神経の問題は、どう解けばいいですか?

まず「圧の話か、血流の話か」を決めてから読みます。頭蓋骨は大きさの変わらない箱で、中身は脳・血液・髄液の3つだけです。どれかが増えれば圧が上がり、そのときの看護は「圧を上げないこと」——頭部30度挙上、頸部は正中、いきみと強い咳を避ける、吸引は短く、ケアをまとめない、が中心になります。反対に虚血性脳卒中は血が届いていない状態なので、看護は「届けている圧を下げないこと」に変わります。同じ高血圧という所見が、片方では合図、もう片方では治療してはいけない代償になります。どちらかを決めるのは症状ではなく画像なので、急性期の設問では単純CTが最初に来ます。

脳卒中で血圧が高いとき、下げないのはなぜですか?

詰まった血管の先には、まだ死んでいない脳(ペナンブラ)が残っていて、そこへ血を送るために身体が自分で血圧を上げているからです。下げると供給が細くなり、助かるはずだった部分まで梗塞が広がります。血栓溶解療法を行わない虚血性脳卒中では、220/120 mmHg までは降圧しないのが基準です。例外は2つあります。血栓溶解療法を行う場合は、投与前に 185/110 mmHg 未満まで下げ、投与後24時間は 180/105 mmHg 未満を保ちます。血管を開けたあとに高い圧が残っていると、梗塞が出血に変わるためです。もう1つは出血性脳卒中で、こちらは出ている血を押し出し続けないために降圧します。だから「脳卒中だから下げない」ではなく、「梗塞か出血か、溶かすか溶かさないか」で決まります。

頭蓋内圧が上がっている患者に、してはいけない看護は?

水平に寝かせること、首を曲げたりひねったりすること、いきませること(排便時の努責、強い咳、長い吸引)、股関節を深く曲げる体位、そして複数のケアをまとめて続けて行うことです。いずれも普段は良い看護か、少なくとも害のない行為で、そこが狙われます。とくに「休ませるために水平にする」は誤答としてよく置かれますが、頭からの静脈の戻りを妨げて圧をさらに上げます。正しくは頭部を30度挙上し、頸部を正中に保ち、処置と処置のあいだに間隔をあけ、部屋を静かに保ちます。吐き気のない嘔吐、片側の瞳孔散大、意識レベルの変化が出たら、看護師の手元の処置で対応せず報告します。

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